準法律行為と附款
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/05 21:17 UTC 版)
準法律行為とは、一方当事者の他方当事者に対する特定の表現(「表現行為」とも呼ばれる。)又はある者の特定の行為(「実行行為」とも呼ばれる。)であって、その表現又は行為があれば、行為者の意図とは無関係に法令の定める一定の法律効果が当然に生じるものをいう。例えば、株主総会の開催通知(表現行為のうち「観念の通知」と呼ばれるもの。)は、招集権者がこれを行うことによって、たとえ招集権者自身は株主総会の開催を望んでいなかったとしても、これに従って参集した株主の集団が株主総会とみなされるという法律効果を生ずる。期限の定めのない債務の履行の催告(表現行為のうち「意思の通知」と呼ばれるもの。)も、債権者がこれを行うことによって、たとえ債権者自身は消滅時効の進行を望んでいなかったとしても、日本民法が適用される限り債務の履行期が到来し、消滅時効が進行を開始する。弁済(実行行為の一種)も、債務者がこれを行うことによって、たとえ債務者自身は消滅時効援用権の喪失を望んでいなかったとしても、日本民法が適用される限り債務者はその時点で既に完成していた消滅時効を援用することができなくなる(最高裁判所昭和37年(オ)第1316号昭和41年(1966年)4月20日大法廷判決・民集20巻4号702頁)。 このように、準法律行為の法律効果は法令によって定められているから、行為者が任意に法律効果を調整することはできない。つまり、「準法律行為の附款」というのは無意味な言説である(通説)。「準法律行為には附款を付すことができない。」と表現してもよい。法令が法律効果の発生、変更又は消滅を何らかの事実の発生や時期の到来と結びつけていても、元々その準法律行為の法律効果はそのような調整付きのものなのだから、「調整前の法律効果」と「調整自体」(すなわち法定附款)とを分けることに意味はない。「調整前の法律効果」を発生させる準法律行為が存在しないからである。 このような議論は、民法学でいう準法律行為だけでなく、行政法学でいう準法律行為的行政行為にも当てはまる。つまり、準法律行為的行政行為には、附款を付することができない。
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