準天頂衛星システムの意義
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/03 04:59 UTC 版)
「準天頂衛星システム」の記事における「準天頂衛星システムの意義」の解説
衛星測位において、利用者の受信機の位置を測定するためには、4機以上の人工衛星から信号を受信することが必要であり、高精度な測位には、8機以上からの受信が望ましい。 しかし、日本では山間部や、高層建築物が立ち並ぶ都市部が多く、平地が少ないため、低仰角の人工衛星から信号を受信することが出来ず、現状のGPS衛星のみでは見通しが遮られ、利用者位置から見た可視衛星数が少なくなり、測位精度が落ちたり、不可能となる場合がある。 仮に、現在30機程度を運用中のGPSに対して、GPS衛星もしくはGPS互換衛星を10機程度追加すれば、可視衛星が増えることが期待され、測位が可能となる場合が増えるが、現在数以上の人工衛星を既存のGPSに追加することは、アメリカ合衆国連邦政府自身にとって費用対効果が悪く、実現の見込みは薄い。地球全周をその対象とするGPSに対して、日本列島からは利用できない位置の衛星が多いため、効率的ではない。 日本の準天頂衛星システムは、GPS衛星とは異なる軌道を持たせて常時可視衛星を増加し、高精度の測位を可能とするために、準天頂衛星を3機以上用意して、日本の真上を通る軌道から測位信号を送信することで、地上から高仰角で観測できる準天頂衛星を、常時1機以上は見通せることができるようにする。上記の図のような上下非対称の8の字(numeral-"8"-shaped)軌道をとる場合、東京都区部では常に70度以上の高い仰角で、1機以上の準天頂衛星を見通すことができる。 そして、準天頂衛星からの信号とGPS衛星からの信号と組み合わせることで、測位できる場所や時間帯を、複数のGNSSの統合運用と同等程度に広げることができる。また、日本の利用者はGPS信号を捕捉するまで、30秒から1分ほどかかっていたのが15秒程度に短縮できる見込みでもある。 準天頂衛星システムでは、専用の測位信号を受信・処理できるように改修・開発した受信機が必要である。また準天頂衛星は高高度軌道にあるので、GPS信号より強い電波を送信する必要がある。 このため人工衛星が大型になっており、運搬ロケットも重量物を持ち上げる大出力の推進装置が必要になる。さらに各準天頂衛星は、衛星軌道面が全く異なるため、GPS衛星(ナブスター衛星)のように、複数機を1機のロケットで同時に打ち上げることも難しい。これらの結果、準天頂衛星システムの構築にはより高度な技術と多額の費用がかかる。一方、高高度軌道のため低軌道衛星のように地球大気分子の影響を受けないため、同量の燃料なら運用期間を長くできる利点がある。
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