法則の適用範囲と例外
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/21 09:41 UTC 版)
「デュロン=プティの法則」の記事における「法則の適用範囲と例外」の解説
デュロン=プティの法則は非常に単純な法則であるが、高温における比較的単純な結晶構造の固体の比熱についてはよい一致を示す。実際、室温での固体金属元素のモル比熱は 2.8 R {\displaystyle 2.8R} から 3.4 R {\displaystyle 3.4R} の範囲に収まる(ベリリウムは例外的に 2.0 R {\displaystyle 2.0R} である)。しかし低温の領域においては、量子力学的性質が現れてくるためデュロン=プティの法則ではその比熱を説明することができない。このような低温の場合については、フォノンの考えを用いたデバイ模型が良い近似となる。 更に軽い非金属元素についても、標準状態では量子的効果が表れているためデュロン=プティの法則には従わない。例としてはホウ素や、炭素を含む分子固体の大半が挙げられる。これらの物質においては、(分子1モルあたりの比熱は 3 R {\displaystyle 3R} よりは大きくなるものの、)固体中の原子1モルあたりの比熱は 3 R {\displaystyle 3R} よりも小さくなる。例を挙げると、氷の融点における比熱は分子1モルあたり約 4.6 R {\displaystyle 4.6R} であるが、これは原子1モルあたりでは 1.5 R {\displaystyle 1.5R} にしかならない。原子1モルあたりの比熱が 3 R {\displaystyle 3R} よりも低くなるのは、低温の軽い原子では本来とり得る振動モードをとることができなくなるためである。この現象は液体よりも固体において多く見られる。例えば液体の水の比熱は原子1モルあたり 3 R {\displaystyle 3R} に近く、デュロン=プティの法則に従っている。 高温での非常に多原子の気体の比熱の理論的な最大値は、デュロン=プティの法則の原子1モルあたり 3 R {\displaystyle 3R} の値に近付く。このように多原子の気体でも高温において固体のような比熱を持つのは、気体の離れた分子間にはポテンシャルエネルギーがなくなり、それによる比熱への(小さな)貢献がなくなるためである。
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