水素の乱雑さ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/19 03:32 UTC 版)
結晶格子内の水素原子は、水素結合にほぼ沿っており、この方法で各々の水分子が保持されている。これは格子内の各酸素原子には2つの隣接する水素があることを意味し、275 pmの結合長に沿って101 pmで隣接している。水素原子が絶対零度まで冷却されると、結晶格子により構造内で凍結した水素原子の位置に相当な量の無秩序が生じる。その結果、結晶構造には格子固有で可能な水素位置の配置数の数により決定される残余エントロピーが含まれる。これは各酸素原子が2つの水素のみを最も近接するところに持ち、1つの水素原子のみを持つ2つの酸素原子を結合する各水素結合という必要条件を維持しながら形成できる。この残余エントロピーS0 は3.5 J mol−1 K−1に等しい。 最初の原理からこの数を概算する様々な方法がある。水素分子がN個与えられたとする。酸素原子は2部格子を形成する。それらは2つのセットに分割でき、1つのセットからの酸素原子の全ての隣接するものが他のセットに含まれる。1つのセットの酸素原子に注目するとN/2の酸素原子がある。それぞれに4つの水素結合があり、2つの水素は近くに2つの水素が遠くにある。これはこの酸素原子に対して水素の構成が ( 4 2 ) = 6 {\displaystyle {\tbinom {4}{2}}=6} だけ可能であることを意味する。よって、これらN/2個の原子を満たす6N/2 の構成がある。ここで残りのN/2個の酸素原子を考えると一般的に満たされない(つまり、その近くにはきっちり2つの水素原子はない)。それぞれについて、水素結合に沿った水素原子の 2 4 = 16 {\displaystyle 2^{4}=16} の可能な配置があり、そのうち6つが許されている。そのため、単純に考えると構成の合計数は 6 N / 2 ( 6 / 16 ) N / 2 = ( 3 / 2 ) N {\displaystyle 6^{N/2}(6/16)^{N/2}=(3/2)^{N}} と予測できる。ボルツマンの公式を用いると S 0 = N k ln ( 3 / 2 ) {\displaystyle S_{0}=Nk\ln(3/2)} となる。ここで k {\displaystyle k} はボルツマン定数で、3.37 J mol−1 K−1 の値を持ち、計測値と非常に近い。2番目のセットにおける酸素原子の16個の水素構成のうち6個が独立して選択できる(誤りである)と仮定しているため、この推定は「素朴」である。より複雑な方法を使用し、可能な構成の正確な数をより正確に近似し、測定値により近い結果を得ることができる。 対照的に氷IIの構造は水素が秩序だっているため、結晶構造が氷Iの構造に変化した時の3.22 J/molのエントロピー変化を説明するのに役立つ。また、氷Ihの斜方晶系で水素が秩序だった形をとる氷XIは、低温で最も安定した形と考えられている。
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