機構と耐性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/16 17:22 UTC 版)
「クロラムフェニコール」の記事における「機構と耐性」の解説
クロラムフェニコールは原核生物である細菌の 50S リボソームに結合する。リボソーム上でのP座のペプチジルtRNAから、A座のアミノアシルtRNAへのペプチド鎖移動を司るペプチジルトランスフェラーゼ (peptidyl transferase) を阻害し、タンパク質合成を妨害することにより細菌の増殖を止める。一方、真核生物本体のリボソームは阻害しないため、真核生物への影響はバクテリアに比べれば遥かに低い。ヒトも真核生物に属すため抗生物質として使用できる。しかしながらミトコンドリアのリボソームは阻害されるため、この点が副作用の主な原因となる。 なお、3ドメインの残り1つである古細菌は、細菌をターゲットとした抗生物質は効かないことが多いが、クロラムフェニコールは有効である。ただし、細菌に比べれば一般に効きにくい。腸内に存在するメタン菌であるMethanosphaera stadtmanaeの増殖は4mg/Lで阻害できるが、同様のメタン菌であるMethanobrevibacterやMethanomassiliicoccusはCATを持つことから25mg/L、SulfolobusやHalobacteriumは23S rRNAの配列の違いにより100mg/Lもの高濃度を必要とする。細菌であるクロストリジウムなどは、メタン菌からCATを獲得して耐性化した可能性がある。 クロラムフェニコール耐性はCAT遺伝子により与えられる。この遺伝子は「クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)」と呼ばれる酵素をコードする。この酵素は、アセチル-S-補酵素A(アセチルCoA)由来のアセチル基を1つまたは2つ、クロラムフェニコールのヒドロキシ基に結合させる。アセチル化されることによってクロラムフェニコールはリボソームに結合できなくなる。 分子生物学では、このCAT遺伝子とプラスミド、クロラムフェニコールを用いた「CAT-assay」と呼ばれる手法がある。
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