機構と起源
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/10 15:42 UTC 版)
天王星の狭い環に関する大きな謎は、その閉じ込めに関するものである。粒子同士を押し留める機構がなければ、環はすぐに崩壊してしまう。そのような機構のない天王星の環の寿命は、100万年を超えない。閉じ込め機構について最も広く信じられているモデルは、ピーター・ゴールドレイクとスコット・トレメインによって提唱されたもので、環の内側と外側の1対の羊飼い衛星が環とアークに重力相互作用し、角モーメントを保つというものである。羊飼い衛星は、環を構成する粒子を平面内に留めるが、徐々に環から遠ざかるように移動する。このような作用を及ぼすためには、羊飼い衛星の質量は環の質量の2倍から3倍なければならない。この機構は、ε環とその羊飼い衛星コーディリア、オフィーリアの間で働いていることが知られている。コーディリアは、同時にδ環の外側の羊飼い衛星でもあり、オフィーリアはγ環の外側の羊飼い衛星でもある。しかし、その他の環の近くには10kmを超える衛星の存在は知られていない。コーディリアとオフィーリアのε環からの現在の距離は、環の年齢を推定するために使える。計算によると、ε環の年齢は、6 × 108年を超えない。 天王星の環は若いため、これらは大きな天体が衝突するなどして、定期的に更新されていると考えられている。パックの大きさの衛星の衝突による寿命は、数十億年と推定されている。これより小さな衛星の衝突による寿命はもっと短い。そのため、現在の内側の衛星や環は全て、過去45億年の間にパック程度の大きさの衛星が衝突してできたものであり得る。そのような衝突の開始は衝突の連鎖を引き起こし、大きな天体はほぼ全て、塵を含む小さな天体になる。質量の大部分は失われ、粒子は相互の共鳴上や羊飼い衛星の位置に落ち着く。このような崩壊進化の最後は、狭い環の形成である。しかし、現在、環にはいくつかの衛星が埋め込まれている。そのような衛星の最大の大きさは、恐らく10 km程度である。 塵の帯の起源には、謎は少ない。塵の寿命は100年から1,000年と非常に短く、環の粒子や衛星、天王星系外からの流星塵の衝突で常に補充されている。粒子や衛星の帯はその光学的深さの小ささから見えないが、塵の帯は、前方散乱では見ることができる。
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