構造的コヒーレンスの原則
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/16 02:28 UTC 版)
「デイヴィッド・チャーマーズ」の記事における「構造的コヒーレンスの原則」の解説
意識体験が物理状態との関連の中で持つであろう性質として、まず構造的コヒーレンスの原則(こうぞうてきコヒーレンスのげんり、英: The principle of structural coherence)を挙げている。これは機能的な気づきの構造と、現象意識の構造の間には、同型性があるだろう、というもの。 現象的な意識体験のある所には、機能的な気づき(アウェアネス)があり、適切な種類の機能的な気づきのある所には現象的な意識体験がある、そしてこれら機能的な気づきと現象的な意識体験の間に構造的な同型性がある、というもの。これを構造的コヒーレンスの原理と呼び、意識に関する新しい自然法則を捜す際の指針になる原理として、つまり意識に関する新しい自然法則が満たさなければならない基本的な束縛条件のひとつとして提示した。 ここでいう気づき(アウェアネス)とは、ある情報を包括的なコントロールに直接的に利用できる状態(direct availability for global control)」を言い、例えば赤いものが見えていることに気づいているとは、「赤いもの見えている」と言葉で報告できること、また赤い信号の表示に気づいている場合であれば「信号が赤いのが見えたので、横断歩道ではなく陸橋を使って道を渡ることにした」といった計画的で全体的な運動に情報を利用できることなどを言う。反射や無意識での反応ではこうしたことは起こらない。 チャーマーズが提示したこの構造的コヒーレンスの原則は、バースのグローバルワークスペース・セオリーやデネットのセレブラル・セレブリティの理論と似ている。つまり脳の一部だけで利用可能な情報でなく、広域的に利用可能な情報が意識に上る、という理論とである。チャーマーズの理論とそれらの違いは、バースやデネットが存在論的に物理主義的な立場からこうした理論を提唱しているのに対し、チャーマーズは性質二元論的立場からこの原理を主張している点にある。つまり物理的に定義される「気づき」の状態に対して、対応する現象意識が自然法則的に付随する、という形でこの原理を提示している。 チャーマーズは構造的コヒーレンスの原理を自然法則ではなく、新しい自然法則が満たす条件として提示している。というのも、この原理の記述の中に「気づき」というマクロレベルの特性が使われているためである。意識に関する新しい自然法則があるとするなら、それはミクロレベルの特性で記述されなければならないとし、気づきの概念(ある情報を包括的なコントロールに直接的に利用できる状態)は、例えば「情報の増幅レベル」といったミクロレベルの特性へ帰着できるのではないか、という推測を提示している。
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