業務災害発生時の責任
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/23 08:34 UTC 版)
業務災害が発生すると、当該事業主は労働者に対して、療養費用や休業中の賃金等に関する補償責任を負うことになる(労働基準法第75条~80条)。しかしながら、労働基準法に定める補償責任のみでは、事業主に支払い能力がなければ被災労働者は実質的な補償を行われないおそれがある。そこで原則として労働者を使用する全事業場を労働者災害補償保険(労災保険)の適用事業として、被災労働者には労災保険による給付を行い、事業主は労働基準法上の補償責任を免れる(労働基準法第84条)。 労災として認定されると、健康保険・船員保険等での給付はなされない。従来、請負業務、インターンシップまたはシルバー人材センターの会員等で、健康保険等と労災保険のどちらの給付も受けられないケースがあったことから、2013年に健康保険法等が改正され、労災保険の給付が受けられない場合は原則として健康保険等で給付を行うことが徹底されることとなった。 労災保険上の保険給付について、その内容や要件は、労働者災害補償保険#保険給付を参照。 また、労働基準法上の補償責任とは別に、業務災害について不法行為・債務不履行(安全配慮義務違反)などを理由として被災労働者や遺族から事業主に対し民事上の損害賠償請求がなされることもある。事業主の安全配慮義務は、従前、民法の規定を根拠に判例として確立されていたところ、2008年施行の労働契約法で明文化された。さらに、事業主に限らず労働災害を発生させたとみなされる者は、警察による捜査を経て送検され、刑法上の業務上過失致死傷罪等に問われることがある。
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