最近の論争
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/25 15:17 UTC 版)
この人道的介入に関する話題として、2005年9月の国連首脳会合成果文書において、「保護する責任」が認められた。これは、自国民保護はすべての国家が責任を負うものであるが、この責任を果たせない国家については、国際社会がその国家の保護を受けることができない人に対して、保護する責任を負うという考え方である。人道的介入の考え方には多くの国が抵抗を示していたが、議論の結果、国連においては「保護する責任」として認められた。 これと同時期、カナダを中心とする委員会が発表した報告書においては、紛争が軍事的介入なしに解決できない状況にもかかわらず、安保理が常任理事国による拒否権の行使などによって動かないような状況においては、特定の国が軍事的介入を行うこともあり得るとしている。この点に関し、国連首脳会合成果文書においては、保護する責任の考えを認めつつも、軍事的介入は安保理の承認によって行使されることが確認されている。 1999年に行われたユーゴスラビア連邦共和国(現在のセルビアおよびモンテネグロ)のコソボ・メトヒヤ自治州(現在のコソボ)への北大西洋条約機構 (NATO) による空爆は、セルビア人武装勢力によるアルバニア系住民の虐殺を止めるという名目で行われたが、国連安保理の事前の決議なしに行われた。しかし、事後的に安保理決議1244によって空爆後の「結果」が事後承認される形となった。その軍事的介入の合法性、違法性について、あるいはこれが人道的介入の慣習法化の初端であるとか、様々な議論が学者の間で行われている。コソボ独立委員会は、空爆は違法ではあったが「正当」であったという結論を出した。この事件をきっかけに、国際法学者の間で、「違法」であるが「正当」であるということとはどういった事態を指すのか、またその法的帰結は何か、という議論が起こっている。
※この「最近の論争」の解説は、「人道的介入」の解説の一部です。
「最近の論争」を含む「人道的介入」の記事については、「人道的介入」の概要を参照ください。
- 最近の論争のページへのリンク