暑熱順化とは? わかりやすく解説

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暑熱順化

読み方:しょねつじゅんか
別表記:暑熱馴化

暑さ順応すること、あるいは、順応させること。夏の暑さ身体慣れる(馴化順応する)こと。

順化」および「馴化」は、環境の変化に応じて生物ある程度時間をかけて適応することを意味する語である。寒い環境慣れることを「寒冷順化」といったり、標高高く酸素濃度の薄い環境慣れることを「高地順化」といったりする。

初夏猛暑酷暑急激な環境変化身体がついて行けず参ってしまいやすいが、夏の終わり頃に同程度猛暑見舞われ場合相対的に乗り切りやすい。これはひと夏の間に暑さに対して身体順化したためである。暑熱順化の有無暑熱障害熱中症)へのリスク高低影響する急激に気温が高まる初夏は特に熱中症などへの対策が必要であり、事前に運動をして発汗促進するなどして暑熱順化を促すといった対応が理想とされる

しょねつ‐じゅんか〔‐ジユンクワ〕【暑熱順化】

読み方:しょねつじゅんか

夏の暑さに体が慣れること。数日から数十日間で起こる短期暑熱順化と、数年または数世代にかけて起こる長期暑熱順化とがある。→寒冷順化

[補説] 近年では、冷房設備普及にともない短期暑熱順化が起こりにくくなっているため、軽い運動などで発汗うながし意図的に順化を行うことで、夏季熱中症予防効果があるとされる


暑熱馴化

(暑熱順化 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/02/27 15:43 UTC 版)

暑熱馴化(しょねつじゅんか、: heat acclimation)とは、体に加わった暑熱ストレスを軽減させるような適応変化の事を言い[1]、暑い環境に順応させることである。「暑熱順化」[2]「暑熱順応」[3]とも表記される。昨今、熱中症患者が急増している要因の一つとして、専門家は「暑熱順化」が不十分な点を挙げる[要出典]

種類

発汗機能(発汗開始温度、部位、量、汗中のナトリウム濃度など[4])や獲得期間により2つに大別される。

短期暑熱順化[5]
短期間の暑熱暴露や運動により獲得するタイプ。外気に触れやすい四肢の発汗が増加。発汗閾値体温が下がる[6]ことと発汗量の増加により適応する。1日に1 - 2時間程度の暑熱暴露を連日繰り返すと数日から2週間程度で順応を獲得できるが、暑熱環境でなくなると1 - 4週間程度で順応効果は消失する[5][7]。体温低下に寄与しない無効発汗(滴り落ちる汗)により体液を失うので脱水症状に陥る。
長期暑熱順化[8]
熱帯地方などの住民にみられ、暑熱地域で長期間生活することで獲得するタイプ。短期型と比較すると発汗開始が遅く量は少なく汗中のナトリウム濃度は低い。発汗閾値体温が高いので発汗中の皮膚温も高く少量の発汗で効率的に体温低下が行われる[9]

方法

発汗を促すことと、環境温度を見直すことに大別できる[10]。前者ではウォーキングジョギング自転車などの運動、半身浴サウナも効果がある[11]。運動環境の湿度は低い方が効果が高く、若年層においては、有酸素運動が比較的有効である[12]

後者では半袖且つ厚着をせずに快適にいられる程度に冷房の設定温度を高めに設定し(使わないというわけではない)、朝夕は室内に外気を取り入れる方法がある。いずれの場合でも、適切な水分補給は不可欠である[10]

馴化は概ね1週間ないし10日で整えることが出来るが[10]、運動強度を上げることにより、効果を早めることが出来る[13]

効果

新陳代謝および発汗機能の向上に有効である[14]汗腺の働きが活発になり、発汗量が増加するものの塩分は汗腺導管部で再吸収されることから塩分喪失が抑制される[15]。汗は塩分が少なくサラサラになり[3][16]、水分補給により体液バランスが回復しやすくなることから、熱中症になりにくくなる[11]。発汗反応の効果は胴体に比べ、など末梢部の方が高く現れる[17]。 暑熱に対する連日の暴露と間欠の暴露で順化効果を比較した2002年の報告によれば、間欠暴露では効果が薄く暴露の無い数日で元に戻ってしまう[18]

脚注

  1. ^ & 松本 ほか 1999, p. 66.
  2. ^ 中井誠一, 新矢博美, 芳田哲也, 寄本明, 井上芳光, 森本武利「スポーツ活動および日常生活を含めた新しい熱中症予防対策の提案 —年齢着衣及び暑熱順化を考慮した予防指針—」『体力科学』第56巻第4号、日本体力医学会、2007年、437-444頁、doi:10.7600/jspfsm.56.437 
  3. ^ a b 岡崎和伸「3.運動時の体液変化とその循環および体温調節への影響」『循環制御』第39巻第2号、日本循環制御医学会、2018年、82-90頁、doi:10.11312/ccm.39.82 
  4. ^ & 松本 ほか 1999.
  5. ^ a b & 松本 ほか 1999, p. 66-67.
  6. ^ 山崎文夫, 生田智也, 曽根涼子「汗の拍出頻度よりみた短期暑熱順化による発汗機能の変化」『Journal of UOEH』第29巻第4号、産業医科大学、2007年、431-438頁、doi:10.7888/juoeh.29.431 
  7. ^ K B Pandolf (1998). “Time course of heat acclimation and its decay”. International journal of sports medicine 19 (S 2): S157-S160. doi:10.1055/s-2007-971985. PMID 9694426. https://doi.org/10.1055/s-2007-971985. 
  8. ^ & 松本 ほか 1999, p. 67-69.
  9. ^ 松本孝朗, 山内正毅, 田井村明博, 李丁範, 小坂光男, 金田英子, 羅宗偉, 曹宇, 乙益絹代, 嶋津宗典, 大渡伸, 土屋勝彦「121 熱帯地住民の長期暑熱順化機序」『日本生気象学会雑誌』第33巻第3号、日本生気象学会、1996年、S43、doi:10.11227/seikisho1966.33.3_S43 
  10. ^ a b c 暑さに強い身体づくり!熱中症を予防する運動”. All About (2012年7月5日). 2012年8月9日閲覧。
  11. ^ a b 熱中症にかかりにくくなる「暑熱順化」”. 日経woman online (2011年7月7日). 2012年8月9日閲覧。
  12. ^ 信州大発”学び”のビッグバンプロジェクト e-Learning教材 暑熱トレーニング12.順化方法の比較
  13. ^ 『熱中症にかかりにくくなる「暑熱順化」』p2
  14. ^ Comi-navi C76 p5 (PDF)コミックマーケットカタログ)
  15. ^ 信州大 暑熱トレーニング8.汗腺機能3
  16. ^ Michael J. Buono, Kimberly D. Ball, and Fred W. Kolkhorst., "Sodium ion concentration vs. sweat rate relationship in humans". Journal of Applied Physiology. Vol.103, No.3, 01 Sep 2007, doi:10.1152/japplphysiol.00015.2007
  17. ^ 信州大 暑熱トレーニング9.発汗反応
  18. ^ 長田泰公「暑熱順化に対する連日暴露対間欠暴露の効果比較(海外文献紹介)」『人間と生活環境』第9巻第1号、人間-生活環境系学会、2002年、29頁、doi:10.24538/jhesj.9.1_29_1 

参考文献

外部リンク


https://cir.nii.ac.jp/all?q=%E6%9A%91%E7%86%B1%E9%A0%86%E5%8C%96



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