星周環境の変遷
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/09 08:25 UTC 版)
恒星の進化の後期段階では、ベテルギウスのような大質量星は質量損失の割合が高くなっていき、10,000年ごとに太陽1個分程度の質量を失っていくとされており、周囲に絶え間なく変化する複雑な星周環境を生み出している。2009年に発表された論文では、恒星の質量損失が「初期から現在までの宇宙の進化、そして惑星形成や生命の発生そのものを理解するための鍵」であると言及されている。しかし、その物理的メカニズムについてはよく分かっていない。マーティン・シュヴァルツシルトが最初に超巨星周辺の巨大な対流セルの理論を提案したとき、彼はそれがベテルギウスのような進化した超巨星の質量損失の原因である可能性があると主張した。最近の研究でこの主張は裏付けられているが、対流の構造、質量損失のメカニズム、広がった恒星大気中の塵の形成方法、およびII型超新星という劇的な最期を迎える条件については依然として不確実性がある。2001年にGraham Harperらは、ベテルギウスが10,000年ごとに0.03太陽質量を恒星風として放出されていると推定したが、2009年以降の研究によりベテルギウスに関する全ての数値が不確実になってしまう一時的な質量損失の証拠が得られた。 天文学者らがこの問題を解くことはそう遠くないことかもしれない。現在、少なくともベテルギウスの半径の6倍に及ぶ巨大なガスのプルームが存在していることが発見されており、ベテルギウスが全ての方向に均等に物質を放出しているわけではないことが示されている。プルームの存在は、赤外線観測でしばしば観測される光球の球対称性が、光球に近い環境下でも維持されないことを示唆している。ベテルギウスの形状の非対称性は異なる波長による観測で報告されていたが、VLTの補償光学装置(NACO)によりこの非対称性の特性が注目されている。このような非対称の質量損失を引き起こす可能性がある2つのメカニズムとして、大規模な対流セルによるというものと自転によって生じる可能性がある極質量損失(Polar mass loss)によるというものがある。ヨーロッパ南天天文台のAMBERを用いてさらに詳しく調べたところ、広がった恒星大気中のガスが上下に激しく動き、ベテルギウス自身と同程度の大きさの「泡」が生成されていることが観測された。そのような恒星の大変動は、Kervellaによって観測された大規模なプルーム放出を支持するものとして結論付けられた。
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