文明の内部構造
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/26 15:39 UTC 版)
世界政治において文化やアイデンティティが重大な影響を果たすようになれば、文明の境界線にしたがって世界政治の枠組みは再構築されることになる。かつてのアメリカとソヴィエトによって形成されたイデオロギーの勢力圏に代って、それぞれの文明の勢力圏が新たな断層線、フォルト・ラインを生み出し、そこで冷戦中にはなかった紛争が頻発するようになっている。1990年代以降に世界的なアイデンティティの危機が出現しており、人々は血縁、宗教、民族、言語、価値観、社会制度などが極めて重要なものと見なすようになり、文化の共通性によって協調や対立が促される。 このような文化に根ざした政治的対立や協調を理解する上で冷戦期において冷戦期とは異なる用語が導入されなければならない。アメリカとソヴィエトの超大国に対し、諸国の関係は同盟国、衛星国、依存国、中立国、非同盟国のどれかであった。しかし冷戦後は文明に対してその文明を構成する国家である構成国、その文明において文化中心的な役割を果たす中核国、文化を共有しない孤立国、二つ以上の文化的な集団によって分裂している分裂国、引き裂かれた国家として国家主体を位置づける枠組みが必要である。 冷戦後の世界政治において主要文明の中核国は重要な役割を果たすようになっている。中核国は他国を文明の構成員に誘致し、また拒否する重要な行為主体である。ある文明の参加各国は中核国を中心に同心円に位置しており、全ての国は文化を共有する文明圏に参加し、協力しようとするが、文化的に異なるものには対抗しようとする。これは安全保障や経済とは明らかに異なる行動原理であり、区別しなければならない。中核国が持つ勢力圏は文明圏と一致し、その影響力は文化水準や文化の影響力などによって左右される。
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