整備の実態
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/16 02:53 UTC 版)
「アロハ航空243便事故」の記事における「整備の実態」の解説
アロハ航空の機体は、熱帯の島嶼部を飛行することから湿気や塩分に曝されやすく、腐食への配慮が特に必要であった。しかし、事故調査においてアロハ航空は、ボーイング社の腐食防止マニュアルに忠実に腐食検知・防御プログラムを実施したという証拠を示せなかった。 さらに、アロハ航空が実施していた通常整備について、事故調査委員会は以下の三つの問題点を指摘した。 構造検査の間の飛行回数が多いこと 検査間隔が長く、その間にラップ・ジョイントの剥離や腐食が進行し疲労が蓄積しうること 構造検査が非常に細分化されて実施されていたこと ボーイング社は、737型機のMPD(Maintenance Planning Document) の中でDチェック(いわゆるオーバーホールに相当する構造検査)を2万時間飛行する毎に実施するよう推奨していた。これに対してアロハ航空はDチェックの間隔をこれより短い1万5千時間とし、FAAもこれを承認した。 しかし、疲労亀裂の成長に大きく影響するのは飛行回数であり、アロハ航空はそのことを十分認識していなかった。ボーイング社は、1時間あたりの飛行回数を1.5回として検査間隔を算出したが、短距離を高頻度で運航するアロハ航空の場合、飛行回数は1時間あたり約3回に達した。 同社路線の飛行時間は平均20分で、繁忙期には1機で1日15便を飛行していた。事故機は、737型機のなかで世界第2位の飛行回数であったが、第1位から第3位までがアロハ航空の機体で、同社の機体は特に飛行回数が多かった。短距離ゆえ飛行高度が低く与圧の負荷が小さいことを考慮しても、飛行回数で見たアロハ航空の検査間隔は、ボーイング社の想定よりも著しく長かった。 アロハ航空は機体の稼働率を上げるため、Dチェックを52分割していた。同社は予備機を持っておらず、夜間や早朝の限られた時間に細切れにして整備を実施していた。事故調査委員会は、このように細分化してしまうと機体全体の状態を総合的に判断できないと指摘している。さらに報告書では、FAAが十分な評価をせず同社の検査方法を承認したと指摘している。
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