政治風刺としての作品
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/11/28 18:41 UTC 版)
この物語の最も一般的な政治的解釈は「ロシア革命」の思想そのもの、つまりプロレタリアートによる社会意識の「覚醒」である。そしてシャリコフをルンペンプロレタリアートの比喩として捉えるのが一般的である。つまりシャリコフは多くの権利と自由を思いがけず手に入れたが、すぐに利己的な性質を現し、自身の同類とそれらの権利を与えた人々の両方を裏切り破壊する(元野良犬でありながら人間の見た目を手に入れたシャリコフが他の野良動物を駆除して出世する)ということである。クリム・チュグンキンは酒場で音楽を演奏することで生計を立てていたが犯罪者であった。物語の終わりは人工的に見え、外部からの干渉(デウス・エクス・マキナ)もなく、シャリコフの創造主らの運命は定まっていたように見える。ブルガーコフはこの作品で1930年代の大規模な弾圧を予言したという見方もある。ブルガーコフ研究者の多くは『犬の心臓』を1920年代半ばの国家指導部についての政治風刺であり、それぞれの登場人物の原型に当時の国家の上層部を持つと考えている。特にシャリコフとチュグンキンの原型にはヨシフ・スターリン(チュグン「銑鉄」、スターリン「鋼鉄の」と両方とも鉄に関する名を持つ)、プレオブラジェンスキー教授はウラジーミル・レーニン(国を変革した)、常にシャリコフと衝突するボルメンタール博士はレフ・トロツキー、シュヴォンデルはレフ・カーメネフ、召使のジナイダはグリゴリー・ジノヴィエフ、ダリアはフェリックス・ジェルジンスキーとされる。
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