推定の及ばない子-嫡出子の範囲の制限
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/16 09:39 UTC 版)
「嫡出」の記事における「推定の及ばない子-嫡出子の範囲の制限」の解説
嫡出の推定が強く認められ、嫡出否認の訴えにも厳格な制限が設けられている関係上、嫡出推定を画一的に適用すると真実と異なる結果を招きやすくなることから推定の及ばない子の概念が導入されている。すなわち婚姻中に懐胎した子は772条によって父性の推定を受けるはずだが、妻の懐胎時に夫が在監・失踪・行方不明・長期間の別居などのため明らかに夫の子ではないときには父性推定は及ばない(通説。判例として最判昭44・5・29民集23巻6号1064頁、このほか嫡出の推定が及ばないとした判例として、妊娠したとみられる時期に夫が出征していた場合につき最判平成10年8月31日判時1655号128頁)。 このような状態において懐胎した子のことを、推定の及ばない子(推定の及ばない嫡出子、表見嫡出子)と呼ぶ。なお、実質は非嫡出子であるから「推定の及ばない嫡出子」と呼ぶのは不適当で、「推定の及ばない子」と呼ぶべきとする論もある。 推定の及ばない子(表見嫡出子)の範囲については、外観説(婚姻関係が破綻していたなど、外観上、夫の子でないことが明らかな場合に限る)、血縁説(血液型などから実質的に親子関係が否定される場合を含む)、家庭平和説・家庭破綻説(家庭が平和な状態にあるときは外観にとどめ、破綻状態にあるときは血縁という事実によるべきで家庭の状態により区別すべきとする説)などがある。最高裁の判例は外観説をとる(最判平10・8・31判時1655号128頁、最判平12・3・14家月52巻9号85頁)。 ただし、夫婦間の子である可能性がある場合には、父性の推定が働かなくなると解すべきではないとされる(通説、別居開始後9箇月余後に生まれた子について、婚姻の実態がないことが明らかでない以上嫡出推定が及ぶとした判例として最判平10・8・31判時1655号112頁(前掲判例と同日だがページ数が異なっている点に注意))。 なお、推定されない嫡出子(推定を受けない子)や推定の及ばない子については、772条の推定が働いてないことから嫡出否認の訴えではなく、親子関係不存在確認の訴えによるべきとされる。確認の利益が認められれば誰からでも、777条の期間にかかわらず、いつでも提起できる。
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