性質・諸概念
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/06 04:33 UTC 版)
逆元の存在から、斜体 D の零でない任意の左イデアルIl・右イデアルIr・両側イデアルI は D の単位元 1D を含まねばならず、それゆえIl、Ir、 I は D 全体に一致せねばならない。逆に、左イデアル(もしくは右イデアル)が零か全体にかぎるような単位的(結合)環は斜体となる。斜体は自明でない両側イデアルを持たぬゆえ単純であり、特に可換単純環は常に可換体を成すが、一般に単純環であって斜体とならぬものが存在する。(例:斜体上の行列環) 斜体 D の中心 C ( D ) := { x ∈ D ∣ x y = y x for all y ∈ D } {\displaystyle C(D):=\{x\in D\mid xy=yx{\mbox{ for all }}y\in D\}} は可換体を成し、D は中心 C(D) 上の多元環となる。多元環に対すると同様、D の中心に可換体 F が含まれるとき、D は F 上定義されている、あるいは D は F 上の斜体であるという。逆に可換体 F が与えられたとき、F を中心とするその上の斜体はどれくらい存在するのかとの問には F のブラウアー群が答えをあたえる。これは、中心性および単純性が体の持ち上げで保たれることと、体上の単純環は常にある斜体上の全行列環に同型であるというアルティン・ウェダーバーンの定理とによるものである。 可換体 F 上の有限階数(つまりベクトル空間として有限次元)となる斜体 D の F 上の次元は平方数 n2 であり、この n を D の F 上の次数 (degree) とよぶ。次数 n は D における F を含む極大可換体 L の F 上の次元として得られることが知られている 特にある種の斜体は、アルティン環の極小イデアル上の自己準同型環として得られる。一般に、任意の環上の既約加群の自己準同型環が斜体を成すことを確かめることができ、それをシューアの補題 (Schur's lemma) と呼ぶ。 斜体 D 上の(左・右)加群は可換体上の加群と同様に(ただし作用の左右は区別して)D上のベクトル空間と呼ばれる。 斜体であるという性質は加群の圏の性質から特徴づけることもできる。環 R が斜体である必要十分条件はすべての左 R 加群が自由加群であることである。
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