性転換の進化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 09:19 UTC 版)
性転換の究極要因を説明する理論として、体長有利性説と呼ばれるものがある。このモデルによれば、体サイズまたは年齢と繁殖成功との関係のしかたが雌雄で異なるとき、性転換が進化的に有利になるとされる。たとえば、体サイズに関係なくランダムに配偶する生物や一夫一妻の生物を考えると、雄は小さくても多数の精子を生産してそれなりの繁殖成功を得られるのに対し、雌の繁殖成功は産卵数によって決まるので体サイズに強く依存する。その結果、小さいうちは雄として、成長して多くの卵を生産できるようになってから雌として繁殖する、すなわち雄性先熟が有利になるだろう。逆に大きな雄が多数の雌を独占するような配偶システムを持つ生物では、小さな雄はほとんど繁殖することができず、大きな雄は非常に高い繁殖成功を得られる。この場合、小さいうちは雌として繁殖し、雌を独占できるサイズまで大きくなってから雄になる、つまり雌性先熟が有利になると考えられる。 これに対して、雌雄ともに自分と近いサイズの異性と配偶する傾向にある場合、つまりサイズ調和配偶の場合などには、繁殖成功とサイズの関係は雌雄で等しくなるので、性転換は有利にならない。性を変えることにはなんらかのコストが必要だと考えられるので、むしろ不利になるだろう。 以上の説明のように、このモデルからは、性転換をするかしないか、またする場合にはどちらの方向に性を変えるかは、その生物の配偶システムによって決まることが予測される。この予測は、とくに魚類の研究から強く支持されている。
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