影響する要因
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/10 15:34 UTC 版)
知能がどの程度親から子に遺伝するか、どの程度生活環境によって変動するか、低年齢時のIQがどの程度後まで連続するかには諸説がある。また知能の遺伝性に関する議論は常に社会的、政治的な論争を引き起こす。たとえば「知能は生得的なものであり、努力をしてもあまり変わらない」という説は、後天的な努力を否定する「好ましくない遺伝子決定論」として批判されることがある。一方、「教育によって知能がかなり上昇する」という説は、教育の重要さを示す反面、業者の宣伝文句となって過度の早期教育をあおる危険性もある。しかし、特定の疾患が遺伝するかどうかはそれが好ましいかどうかとは別の問題であるのと同じように、知能が遺伝するかどうかは社会的に危険かどうかとは別の問題である。 また、実はこの両者はともに、知能の遺伝性の問題とは、知能の絶対水準が主として遺伝で決まっているか否かであるという捉え方をしている。しかし現代の心理学者や行動遺伝学者は、この問題については、主として、集団の知能の分散のどの程度が遺伝の影響として説明できるかという考察をしており、絶対水準については何も語っていない。 ターマンがスタンフォードビネーテストを発表したころは、このテストで測定される知能は、生得的な能力を測っており、かつその絶対水準がおおむね遺伝によって決まっていると考えられていた。ターマンや、彼の影響を受けた鈴木治太郎らの著書を読むと、父親の職業や、都会と田舎でビネーテストの成績が違うことを、主として遺伝的な差と見て疑うところがない。しかし、その後、時代が新しくなるにつれて知能テストの成績が向上するという、後にフリン効果と呼ばれる現象が見出されることによって、そのようなナイーブな考え方が成り立たないことが明らかとなった。
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