弾体が健全な徹甲弾
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/29 11:30 UTC 版)
徹甲弾の運動について定式化した最初の理論はBenjamin Robins(英語版)および、Leonhard Eulerによって提案された。この理論では、徹甲弾の運動はニュートンの運動方程式に従って等加速度運動するものとして取り扱った。すなわち、徹甲弾は徹甲弾の材質と寸法、および装甲の強度によって徹甲弾の加速度が決定され、停止するまでの距離が弾体の性能に相当する。等加速度運動であるため、侵徹深さは衝突速度の2乗に比例する。一方、Jacob de Marreの式などの徹甲弾の貫通深さと衝突速度の関係についての経験則では、貫通深さは衝突速度の1.3~1.4乗に比例し、2乗とはならない。 Jean-Victor Ponceletは1835年、侵徹の各瞬間での速度が弾体の加速度に影響するモデルを提案した。弾体の加速度 a {\displaystyle a} は、 a = C + B V 2 {\displaystyle a=C+BV^{2}} と表される。ここで、 V {\displaystyle V} は弾体の速度、 C {\displaystyle C} は装甲強度に比例する定数、 B {\displaystyle B} は弾体の速度によって生じる抵抗に比例する定数である。Euler-Robins、Ponceletのいずれの理論も、徹甲弾の性能を徹甲弾の運動に基づいて導出しており、侵徹深さ P {\displaystyle P} はそれぞれ E u l e r − R o b i n s : P = V 0 2 2 C {\displaystyle \mathrm {Euler-Robins} :P={\frac {V_{0}^{2}}{2C}}} P o n c e l e t : P = 1 2 B ln ( 1 + B V 0 2 C ) {\displaystyle \mathrm {Poncelet} :P={\frac {1}{2B}}\ln {\left(1+{\frac {BV_{0}^{2}}{C}}\right)}} と表される。上式中の B {\displaystyle B} 、 C {\displaystyle C} は弾体の形状、密度、装甲の密度、強度に依存する定数である。弾体が健全な徹甲弾では広い速度範囲についてPonceletの式が成り立つ。Forrestalは上式の定数項と弾体の形状、密度、装甲の密度、強度の関係を解析的に検討した式を提案した。Forrestalは、装甲の強度が弾体の運動に与える影響をCavity expansion analysisを用いることで評価した。 Cavity expansion analysisには種々の形式があるものの、装甲が非圧縮性でキャビティ形状が球状であるときには、上式の C {\displaystyle C} は C = R t S m {\displaystyle C={\frac {R_{t}S}{m}}} R t = 2 σ t 3 [ 1 + ln ( 2 E 3 σ t ) ] {\displaystyle R_{t}={\frac {2\sigma _{t}}{3}}\left[1+\ln {\left({\frac {2E}{3\sigma _{t}}}\right)}\right]} として与えられる。ここで、 m {\displaystyle m} は弾体の質量、 S {\displaystyle S} は弾体の断面積、 σ t {\displaystyle \sigma _{t}} は装甲材料の降伏応力、 E {\displaystyle E} は装甲材料のヤング率である。 AndersonおよびWalkerはこの手法はAPFSDSにおいても装甲の強度の影響を適切に扱えることを報告している。
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