弾体が消耗する徹甲弾
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/29 11:30 UTC 版)
APFSDS、HEAT(成形炸薬)といった高速度で侵徹が生じる徹甲弾では、装甲から受ける抵抗により弾体の塑性変形・消耗が生じる。この時、侵徹速度は弾体の速度とは異なるために上記議論では侵徹深さを求めることが出来ない。Birkhoff、McDougall、Pugh、Taylorは成形炸薬のような弾体が柔らかく、また衝突速度が高いために装甲の強度を考慮しなくてもいい侵徹が生じる場合について、運動量保存則に基づいて立式し、流体力学的な取り扱いにより侵徹速度と侵徹深さを導出した。このような背景から、弾体が消耗する侵徹はHydrodynamic penetrationと呼ばれる。 Birkhoffらの理論によれば、侵徹速度(弾体先端の速度) u {\displaystyle u} と弾体速度(弾体後端の速度) v {\displaystyle v} の間には 1 2 ρ p ( v − u ) 2 = 1 2 ρ t u 2 {\displaystyle {\frac {1}{2}}\rho _{p}\left(v-u\right)^{2}={\frac {1}{2}}\rho _{t}u^{2}} の関係があり、上式から定まる侵徹速度と弾体が消失するまでの時間から、侵徹深さ P {\displaystyle P} は P / L = ρ p ρ t {\displaystyle P/L={\sqrt {\frac {\rho _{p}}{\rho _{t}}}}} と表される。ここで、 ρ p {\displaystyle \rho _{p}} 、 ρ t {\displaystyle \rho _{t}} は弾体および装甲の密度であり、 L {\displaystyle L} は弾体の初期長さである。このことは、十分に高速な速度域では、その侵徹深さは弾体の、装甲の密度と弾体の初期長さによって決まることを示している。 一方、APFSDSのような弾体の強度が高く、衝突速度が低い弾体では、弾体、装甲の強度が侵徹速度、侵徹深さに影響しうる。TateおよびAlekseevskiiは弾体と装甲の強度を考慮したモデルを独立に提案している。本モデルに基づけば、衝突速度が十分に高いとき、侵徹深さは密度比によって決定されるものの、APFSDS程度の速度域(1~2 km/s)では、装甲の強度はその侵徹深さに大きく影響する。 AndersonおよびWalkerはこのような弾体が消耗する侵徹を連続体力学の観点から取り扱い、弾体が消耗する侵徹と弾体が健全な侵徹とを統一的に取り扱うモデルを提案している
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