幻想的思考
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/04 00:27 UTC 版)
性的虐待に遭った人の考えることが宇宙に飛び出したようなものになることもあるとも言われ、メディア作品でも取り上げられる事が多い。Scott Heimの1995年の小説『謎めいた肌(Mysterious Skin)』では男性に被害を受けた少年が記憶を失い、それによって自分はその間宇宙人に誘拐されたのだと解釈し、その後UFOに関する情報を集めている。この小説では、解離による記憶の欠損を「何か特別なことなのだ」と思い込み、創造的に再解釈している。だが、思春期後期になり段々と解離の効果が失われてきている。 インセストについての話では、カール・グスタフ・ユングは兄に犯された事がある女性を診断しているのだが、その女性から聞き出した話は幻想的な話だったとされる。彼女によればこの世は汚れているが、月の世界は美しく豊かであるという。月の高山には女や子供をさらう吸血鬼が住んでいて人々は絶滅の危機に瀕していた。そこで彼女は吸血鬼を倒す計画を立てたのであるが、そこに現れたのはこの世のものとは思えない美しい男吸血鬼で、彼女を連れて一緒に飛び立ったのだという。 これに関してユングはインセストは地球上では認められず、社会から阻害されるものではあるが、神話世界ではそれは逆転し、インセストは高貴な人の行うこととされるためであると述べている。このような話はグノーシス主義の神話に近いといわれる。 そもそも解離は異常とみなされがちであるが、実際には大抵の文化ではそうではなく、それどころか特別な能力を持つ人物として扱われる。後世のイスラーム学では魂だけではなく肉体も伴った浮遊ということになっているが、イスラームの聖典クルアーンの第17章「夜の旅」にすら解離現象らしきものは見出される。Hegeman, E. (1997) は488の文化のうち90%に文化的に許容された解離現象が見出された事を報告しており、リチャード・ガートナー (1999) は、シャーマンのトランスなどは決して異常とはみなされていなかったのだが、自分達の属する文化ではこのような適応は狂信的宗教のような扱われ方がされ社会の辺縁に置かれがちだと指摘する。なお、『精神障害の診断と統計マニュアル』 (DSM-IV) のDDNOSの項目ではこのようなものは解離性障害には含めない旨が明記してある。
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