寿命、ホーキング放射およびガンマ線
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/06 07:22 UTC 版)
「原始ブラックホール」の記事における「寿命、ホーキング放射およびガンマ線」の解説
原始ブラックホールを検出したり、もしくは質量と存在量に制限を与えたりする方法には、ホーキング放射がある。1974年にスティーヴン・ホーキングが、多数の小さい原始ブラックホールが銀河系の銀河ハロー領域に存在している可能性があるという理論を提唱した。全てのブラックホールは理論的に、質量に反比例した割合でホーキング放射を行うと考えられている。この放射はブラックホールの質量をさらに減少させるため、非常に小さい質量を持つブラックホールは暴走的に蒸発し、最終段階では大規模な放射のバーストを発生させる。これは数百メガトンの爆発力をもたらす水素爆弾に匹敵する。 3太陽質量の一般的なブラックホールは、物質の降着がない場合でも蒸発するまでにおよそ 1069 年を必要とするため、現在の宇宙の年齢の間にその質量を失うことはできない。しかし原始ブラックホールは恒星の核の崩壊によって形成されるものではないため、いかなる大きさにもなる可能性がある。質量がおよそ 1012 kg のブラックホールは、ホーキング放射に対する寿命が宇宙の年齢とおおむね等しくなる。このような低質量のブラックホールがビッグバンの際に十分な量形成されたのであれば、我々は銀河系内の比較的近傍においてこれらのいくつかの爆発を観測できるはずである。2008年に打ち上げられたNASA のフェルミガンマ線宇宙望遠鏡は、このような原始ブラックホールの蒸発を探査することを目的の一部として設計されている。フェルミの観測データからは、1013 kg 以下の原始ブラックホールがダークマター全体の質量に占める割合は 1% 未満であるという制約が得られている。原始ブラックホールの蒸発はビッグバン元素合成にも影響を及ぼし、宇宙の軽元素の存在量を変える可能性がある。しかし理論的なホーキング放射が実際に存在しないとしても、原始ブラックホールは小さく重力的には大きな影響を及ぼさない存在であるため、宇宙でそれらを検出するのは不可能ではないにせよ極めて難しいと考えられる。
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