宝塚ボーガン殺傷事件
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宝塚ボーガン殺傷事件 | |
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場所 | ![]() |
日付 | 2020年(令和2年)6月4日木曜日 午前10時15分頃 (JST) |
死亡者 | 3人 |
負傷者 | 1人 |
他の被害者 | 犯人の家族4人 |
犯人 | 事件当時無職の男A(事件当時23歳、#犯人A参照) |
動機 | 怨恨 |
対処 | 犯人を逮捕・起訴 |
訴訟 | 公判前整理手続中 |
管轄 | 兵庫県警察 神戸地方検察庁 神戸地方裁判所 |
宝塚ボーガン殺傷事件(たからづかボーガンさっしょうじけん)は、2020年6月4日に兵庫県宝塚市のアパートで発生した殺人事件。本事件の犯人がボーガン(クロスボウ)を殺人に用いたことが背景となり、ボーガンの所持を原則禁止し、都道府県公安委員会の許可制とする改正銃刀法が2022年3月15日に施行された[1]。
事件の経過
事件発生
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2020年6月4日午前10時15分頃、宝塚市にある住宅で男女4人がボーガンのようなもので撃たれ、家族3人が死亡した。兵庫県警察は殺人未遂の現行犯で現場の家に住む自称大学4年生の男Aを逮捕した[2][3]。
現場の住宅では殺傷能力が高いとされるボーガンの矢が残されており、この矢は命中したあと引き抜きにくくする『返し』が付いていた[4]。
Aは「ボーガンで4人を撃った」「祖母、弟、母の順番で撃った[5]。伯母も電話で呼び出して撃った」などと供述した。弟は風呂場のあたりで倒れており、2本の矢が頭に刺さっていた。病院に搬送された時はまだ息があったが、回復せず亡くなった[6]。
弟は頭部2カ所を撃たれており、同月6日の司法解剖で死因は「出血性ショック」であった。また他の2人の死因は頭部を撃たれたことによる「外傷性くも膜下出血」であった[7]。
捜査
10月20日、神戸地方検察庁はAの鑑定留置について、当初予定されていた7月6日から11月5日までの鑑定留置を12月10日まで延長する許可が出たと発表した[8]。
2021年1月22日、神戸地方検察庁は鑑定留置の結果を踏まえ、刑事責任能力を問えると判断しAを神戸地方裁判所(神戸地裁)に起訴した[9]。
刑事裁判
第一審
2022年7月に10月11日の初公判から11月7日の判決公判までの全6回の公判期日が決められていたが、勾留中の被告人Aの心身の状態が悪化し、治療を要すると医師が診断したため、9月28日に神戸地裁は公判期日を同日付で全て取り消し、10月4日に予定されていた裁判員の選任手続きも中止された。初公判直前に裁判日程が白紙になるのは異例とされる[10]。
その後Aの心身の状態が回復したとみられ、神戸地裁は2025年8月13日に9月25日の初公判から10月31日の判決までの全7回の公判期日を指定した。責任能力の有無が主な争点になるとみられる[11][12]。
犯人A
逮捕されたのは宝塚市内に住む23歳元大学生の男A[3]。
地元の公立中学校出身でサッカー部に在籍していた。近隣住民らの評判は「変わっている」「普段はおとなしいけれど、スイッチが入ると気性が激しくなり、性格が180度変わった」と伝わっており、当時は学校も休みがちで、クラス内での存在感は薄く、家庭環境が複雑だったという[13]。亡くなった弟の知人らによると、ここ数年、Aは母親や弟と関係が悪かったという[14]。
逮捕当時、Aの肩書きは大学生と報道されていたが、後の調べで休学中の2019年9月末に学費未納で大学を除籍になっていたことが判明し、一部メディアは肩書きを大学生から無職に切り替えた[15]。高校卒業後も交流があった同級生によると、高校時代からほぼ毎日ガソリンスタンドでアルバイトをしていて、経済的に苦しい様子だったという[16]。
各所の反応
各自治体の対応
- 兵庫県
- 岡山県
- 2020年6月11日、岡山県が岡山県青少年健全育成条例に基づいてクロスボウを有害玩具に指定するための審議を同月15日に行うことを発表[21]。審議の結果、全会一致で有害玩具に指定する方針を固め[22]、同月19日に指定された[23]。
- 和歌山県
- 2020年6月26日、和歌山県がクロスボウを同日付けで和歌山県青少年健全育成条例の有害玩具類に指定したと発表[24]。競技で使用するなどの正当な理由がある場合を除き18歳未満の者の所持を禁止した他、事業者に販売相手の年齢確認と自動販売機などに有害指定品を置かないことを求めた[24]。
- 徳島県
- 2020年7月22日、徳島県がクロスボウを徳島県青少年健全育成条例における有害がん具類に指定した[25]。
- 福井県
- 2020年8月5日、福井県がクロスボウを福井県青少年愛護条例における有害玩具刃物類に指定し、18歳未満の者への販売・貸し出しを禁止した[26][27][注釈 1]。
- 富山県
- 2020年8月24日、富山県が富山県青少年健全育成条例に基づき、クロスボウを有害玩具類に指定したと発表[28]。18歳未満への販売・貸し付けを禁止し、事業者に販売相手の年齢確認を義務付けた[28]。
- 新潟県
- 2020年9月8日、新潟県が新潟県青少年健全育成条例に基づき、ボーガンを販売等制限がん具類に指定することを決め、同日の新潟県青少年健全育成審議会に諮問し、指定は妥当と答申された[29]。同月15日、新潟県報で告示され、指定された[30]。
- 熊本県
- 2020年11月18日、熊本県青少年問題協議会が銃型の洋弓で矢を撃つボーガンの全てを熊本県少年保護育成条例に基づく有害玩具に指定することを決め[31]、同日指定された[32]。
政府・警察の動向
2020年6月6日、菅義偉官房長官(当時)が記者会見で、ボウガンの販売や所持の規制を検討する考えを示した[33]。
同年12月17日、警察庁がボーガンの所持を許可制とする方向で銃砲刀剣類所持等取締法改正を検討すると発表[34]。
2021年6月8日、クロスボウの使用及び販売の規制、所持の許可制を定める改正銃刀法が成立した。規制では人の生命に影響を及ぼし得るものが対象。所持には都道府県公安委員会の許可が必要となりスポーツ用、動物麻酔用などに限り許可を受けた用途以外での発射は認められない。また使用は安全性が確保が出来た場合のみに限られる[35]。
銃刀法改正法の成立を受け、全国の都道府県警察では同法施行(2022年3月15日)の6か月後(同年9月14日)までボーガンの無償回収を進めている[36][37]。しかし、2021年9月15日までに950本しか回収されておらず、警察庁も「これまで規制の対象ではなかったこともあり、流通や所有者の数が把握できず、全体のどの程度回収できているか不明である」とコメントしている[37]。
模倣
- 2020年7月26日、神戸市で夫をボーガンで撃ち、殺人未遂の容疑で妻が逮捕された事件で、妻は「宝塚市の事件をまねた」という趣旨の供述をした[38]。
- 2020年9月1日、長野県長野市で知人の70代男性に、自宅でボーガンのようなもので矢を放ち腕にけがを負わせたとして、長野市の無職の28歳の女性が殺人未遂の疑いで逮捕された[39]。
脚注
注釈
出典
- ^ “クロスボウ原則所持禁止 改正銃刀法施行、許可制に”. 日本経済新聞電子版 (日本経済新聞). (2022年3月15日). オリジナルの2025年7月2日時点におけるアーカイブ。 2025年7月2日閲覧。
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: CS1メンテナンス: 先頭の0を省略したymd形式の日付 (カテゴリ) - ^ “容疑者「伯母を電話で呼び出した」 玄関付近で矢放つ? 兵庫・ボーガン4人殺傷”. 毎日新聞. (2020年6月5日) 2020年6月6日閲覧。
- ^ a b “兵庫ボーガン事件 同級生「被疑者は明るく優しい子」 矢が刺さった女性に現場騒然”. 毎日新聞. (2020年6月4日) 2020年6月6日閲覧。
- ^ “宝塚ボーガン事件 殺傷力高い矢を用意か”. テレ東NEWS. (2020年6月6日) 2020年6月6日閲覧。
- ^ “背後から不意打ちか 祖母と弟、後頭部に矢―ボーガン4人殺傷・兵庫県警”. 時事ドットコム (2020年6月6日). 2020年10月14日閲覧。
- ^ a b “宝塚ボーガン4人殺傷 容疑者が語った殺害動機は「家族への恨み」”. AERA dot.. (2020年6月6日) 2020年6月7日閲覧。
- ^ “「祖母襲った後一人ずつ」 宝塚ボウガン殺傷事件”. テレ朝news. (2020年6月6日) 2020年6月7日閲覧。
- ^ “親族殺傷で鑑定留置延長 12月まで、宝塚ボーガン―神戸地検”. 時事通信社. (2020年10月20日) 2020年10月20日閲覧。
- ^ “兵庫のボーガン殺傷事件で男起訴、神戸地検”. 産経新聞. (2021年1月22日) 2021年1月24日閲覧。
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: CS1メンテナンス: 先頭の0を省略したymd形式の日付 (カテゴリ) - ^ “勾留中に被告が心身不調、ボウガン裁判の期日白紙に…回復しなければ取りやめも”. 読売新聞オンライン (読売新聞社). (2022年11月6日). オリジナルの2025年7月2日時点におけるアーカイブ。 2025年7月2日閲覧。
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: CS1メンテナンス: 先頭の0を省略したymd形式の日付 (カテゴリ) - ^ 共同通信 (2025年8月14日). “クロスボウ殺傷事件、9月初公判 兵庫4人被害、法改正の契機に”. 琉球新報デジタル. 2025年8月15日閲覧。
- ^ “宝塚ボーガン4人殺傷事件から5年、9月初公判へ 男の心身不調で3年停止、責任能力の有無が争点か” (Japanese). 神戸新聞NEXT (2025年8月14日). 2025年8月15日閲覧。
- ^ “宝塚ボーガンの容疑者、近隣住民も「変わっている」”. 日刊スポーツ. (2020年6月5日) 2020年6月6日閲覧。
- ^ “ここ数年は容疑者と家族らの関係悪化か 宝塚ボーガン殺傷事件”. MBSニュース. (2020年6月6日) 2020年6月7日閲覧。
- ^ “休学のまま大学除籍、容疑者知らず? ボーガン4人死傷 兵庫・宝塚”. 産経新聞. (2020年6月5日) 2020年6月8日閲覧。
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: CS1メンテナンス: 先頭の0を省略したymd形式の日付 (カテゴリ) - ^ “ボーガン殺傷容疑者、大学除籍 19年末に学費未納で 友人と交流途絶える”. 毎日新聞. (2020年6月6日) 2020年6月6日閲覧。
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: CS1メンテナンス: 先頭の0を省略したymd形式の日付 (カテゴリ) - ^ “県がボーガンを「有害玩具類」に緊急指定 宝塚の殺傷事件で”. 神戸新聞NEXT. (2020年6月5日) 2020年10月17日閲覧。
- ^ “兵庫県、ボーガン全所有者に届け出義務付け 全国初の条例成立、罰則も”. 毎日新聞. (2020年10月5日) 2020年10月17日閲覧。
- ^ “全国初のボーガン規制条例、12月1日施行 県、所有者の届け出義務化”. 神戸新聞NEXT (神戸新聞社). (2020年11月30日) 2021年2月7日閲覧。
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- ^ “岡山県、ボーガンを有害指定へ タガーナイフ以来12年ぶり”. 産経ニュース. (2020年6月11日) 2020年6月22日閲覧。
- ^ “県、ボーガンを有害がん具指定へ 6月中にも 宝塚死傷事件受け”. 山陽新聞. (2020年6月15日) 2020年6月22日閲覧。
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- ^ a b “ボーガンを有害玩具類に指定 県、兵庫の事件で /富山”. 毎日新聞 (毎日新聞社). (2020年8月25日) 2021年2月10日閲覧。
- ^ “ボーガン 18歳未満への販売禁止へ”. 新潟日報モア (新潟日報社). (2020年9月9日) 2021年2月7日閲覧。
- ^ 新潟県告示第1024号 - 新潟県 (PDF)
- ^ “ボーガン「全て有害玩具」 熊本県、条例で規制へ”. 熊本日日新聞 (熊本日日新聞社). (2020年11月19日) 2021年2月11日閲覧。
- ^ “有害ながん具類等の指定について【熊本県】”. 熊本商工会議所 (2020年12月4日). 2021年2月11日閲覧。
- ^ “菅長官、ボウガン販売・所持の規制検討…3人殺害事件受け”. 読売新聞. (2020年6月5日) 2020年6月7日閲覧。
- ^ “ボーガン所持を許可制に 警察庁、銃刀法改正へ”. 日本経済新聞 (日本経済新聞社). (2020年12月17日) 2021年2月19日閲覧。
- ^ “ボーガンの所持、許可制に 改正銃刀法が成立”. 朝日新聞. 2021年6月15日閲覧。
- ^ “クロスボウの所持が禁止されます!”. 警察庁. 2021年10月18日閲覧。
- ^ a b “クロスボウ「回収進まず」 950本、流通数不明―改正銃刀法成立3カ月・警察当局”. 時事通信 (2021年10月18日). 2021年10月18日閲覧。
- ^ “夫をボーガンで撃ち逮捕の妻 「宝塚市の事件をまねた」と供述”. TBS NEWS. 2020年7月27日閲覧。
- ^ “知人男性に矢放つ、ボーガンか 殺人未遂容疑で28歳女性逮捕”. KYODO NEWS. 2020年9月1日閲覧。
関連項目
- 宝塚ボーガン殺傷事件のページへのリンク