宇佐美誠とは? わかりやすく解説

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宇佐美誠

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/09 13:36 UTC 版)

宇佐美 誠(うさみ まこと、1966年 - )は、日本の法学者京都大学教授。専門は法哲学。学位は、博士(法学)

人物

愛知県名古屋市生まれ。名古屋大学法学部の学生だったとき、正義などについての価値判断には正解がなく、その判断をする人にとってだけ正しいという相対主義にもともと立っていたが、だんだん疑問をもつようになり、哲学の勉強を進めた。そして、ある日、価値判断に正解がないとは言えないのだと確信した。そこで、価値について研究することには意味があると考えて、法哲学を志すようになったという[1]

討論型授業の実践者として知られている。これは授業の前半で講義を行い、後半では学生からの質問やコメントを次々に受け付けて、対話や討論をしながら授業を進めるというもの。東京大学名古屋大学北海道大学慶應義塾大学同志社大学立命館大学早稲田大学などで討論型授業を行った[2]東京工業大学での講義の一部がNHK教育テレビジョンの「白熱教室JAPAN」で放送された後、単行本になった[3]。この授業のやり方を一般市民向けの講演に応用した討論型講演も行っている[4]

法哲学の中の法概念論と正義論(法価値論)が、主な専門である。法概念論では、法実証主義に批判的で、ロナルド・ドウォーキン解釈主義に近い立場をとっていると思われる。正義論では、正義が成り立つ範囲を広げるような研究をしている。伝統的な正義思想では、同時代人の中でだけ正義が成り立つと考えられてきたが、こうした考えを克服しようと、環境問題を題材として、世代間正義(世代間倫理)について考察している[5]。また、従来は国家の中で正義が考えられてきたのに対して、南北問題開発途上国貧困を題材に、グローバルな正義を論じている[6]。南北問題を背景に、気候変動について正義や責任を考える気候正義の研究の草分けである[7]。他に、独裁政治から民主主義に移る途中の社会で過去の人権侵害にどう取り組むかという移行期正義(特に真実和解委員会)も研究している[8]

法と経済学法政策学[9]社会選択理論実証政治理論などの社会科学と法哲学を橋渡しするような研究も行っていた。また、公共性市民社会ベーシックインカム[10]など、幅広く論じている。その他、人工知能地球壊滅リスク人類の絶滅)についての倫理学的な考察もしている[11][12]

日本公共政策学会副会長・理事、日本ユネスコ国内委員会委員などを歴任。日本公共政策学会会長、法と経済学会常務理事、日本法哲学会理事、先端技術倫理学会理事。

経歴

学歴

  • 1989年 名古屋大学法学部卒業
  • 1991年 名古屋大学大学院法学研究科博士課程(前期)修了
  • 1996年 博士(法学)(名古屋大学)

職歴

  • 1991年 - 1993年 名古屋大学法学部助手
  • 1993年 - 1996年 中京大学法学部専任講師
  • 1996年 - 2002年 中京大学法学部助教授
  • 2002年 - 2004年 中京大学法学部教授
  • 2004年 - 2007年 東京工業大学大学院社会理工学研究科助教授
  • 2007年 - 2008年 東京工業大学大学院社会理工学研究科准教授
  • 2008年 - 2013年 東京工業大学大学院社会理工学研究科教授
  • 2013年 - 京都大学大学院地球環境学堂教授

1997年 - 1999年に、ハーバード大学客員研究員、2021 - 2024年に、高知工科大学客員教授。

業績

著書

編著

  • 鈴村興太郎金泰昌)『公共哲学20 世代間関係から考える公共性』東京大学出版会、2006年
  • 『法学と経済学のあいだ』勁草書房、2010年
  • (濱真一郎)『ドゥオーキン』勁草書房、2011年
  • 竹下賢)『法思想史の新たな水脈』昭和堂、2013年
  • 『グローバルな正義』勁草書房、2014年
  • 『気候正義』勁草書房、2019年
  • 『AIで変わる法と社会』岩波書店、2020年
  • 足立幸男)Governance for a Sustainable Future, Springer, 2023.

訳書

  • ロナルド・ドゥウォーキン『裁判の正義』木鐸社、2009年

脚注

  1. ^ 「現代法を解明し、法の新たな役割を提案する」(研究室訪問 No.30)Kuramae Journal, No. 1017, 2010, 48-49.
  2. ^ 宇佐美誠「討論型授業による教養教育」山脇直司編『教養教育と統合知』東京大学出版会、2018年
  3. ^ 宇佐美誠『その先の正義論』武田ランダムハウスジャパン、2011年
  4. ^ 研究業績:宇佐美 誠 教授 京都大学 宇佐美誠研究室
  5. ^ 宇佐美誠「将来世代・自我・共同体 (特集:世代間衡平性の経済学)」『経済研究』第55巻第1号、岩波書店、2004年1月、1-14頁、doi:10.15057/21603hdl:10086/19996ISSN 00229733NAID 120005252845 
  6. ^ 宇佐美誠「国際法におけるグローバルな正義」『世界法年報』第34巻、世界法学会、2015年、5-33頁、doi:10.11388/yearbookofworldlaw.34.0_5ISSN 0917-0421NAID 130006210878 
  7. ^ 宇佐美誠「気候の正義―政策の背後にある価値理論―」『公共政策研究』第13巻、日本公共政策学会、2013年、7-19頁、doi:10.32202/publicpolicystudies.13.0_7ISSN 2186-5868NAID 130007661558 
  8. ^ 宇佐美誠「移行期正義―解明・評価・展望―」『国際政治』第171巻、日本国際政治学会、2013年、43-57頁、doi:10.11375/kokusaiseiji.171_43ISSN 1883-9916 
  9. ^ 宇佐美誠「正義と利益 : 法政策学の 2つの礎石」『新世代法政策学研究』第10巻、北海道大学グローバルCOEプログラム「多元分散型統御を目指す新世代法政策学」事務局、2011年2月、15-40頁、CRID 1050001339007263616hdl:2115/45062ISSN 1883-342X 
  10. ^ 宇佐美誠「ベーシック・インカム:自由・正義・尊厳」駒村圭吾編『Liberty2.0:自由論のバージョン・アップはありうるのか?』弘文堂、2023年 ISBN 978-4335359347
  11. ^ 宇佐美誠「存亡リスクの公共政策学・序説」『公共政策研究』第21巻、日本公共政策学会、2021年、111-123頁、doi:10.32202/publicpolicystudies.21.0_111ISSN 2434-5180 
  12. ^ [1] 「人類が滅亡する確率を求める研究 リスクは核や気候変動のほかにも」『朝日新聞デジタル』2023年8月11日(インタビュー)

外部リンク

  • [2] 京都大学 宇佐美誠研究室
  • [3] Researchmap「宇佐美誠」



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夢幻ペガサス:兵藤千里本作オリジナル車。ノッチバックタイプのクーペボディを持つ。車体に装備された超音波センサーとマイコンにより最速の走行ラインを算出し、データを他車に転送可能な機能を持つ。劇中ではボブキャットのサポート役を担当した。ワタナベスーパースピリット:渡辺俊光本作オリジナル車。基本性能はペガサスに準じているが、プロトタイプレーシングカーのボディを持つ。ボブキャット:五十嵐充本作オリジナル車。基本性能はペガサスに準じているが、ウェッジシェイプのボディを持ち、レース走行に特化した設計となっている。前述のマイコン機能により技術が未熟なドライバーでもプロと同じレベルで走行が可能。プロトレーシングポルシェシルエット:宇佐美誠シルビアシルエット:スカイラインシルエット:チームMDMフェラーリ・308GTB:南条久子トヨタ・2000GT:小野麗子トヨタ・セリカ1600GTV:松木千明その他日産・スカイラインRS日産・シルビアトヨタ・MR2:東條誠コーナーリング重視のチューニング。日産・フェアレディZ・日産ワークスカー 原作での通称はレーシングZ:小早川 卓原作では常磐道にてグレーサーZとのバトルの末エンジンブローを起こしてリタイヤ。MITOコンツェルン編
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