学術雑誌と査読
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/02 03:58 UTC 版)
学術雑誌は論文公表の場のひとつであるが、論文公表において、様々な公表の場の中でも学術雑誌を特に重要なものたらしめているのは、査読と呼ばれる過程である。 学術雑誌に投稿される論文は多数あるので、その全てを掲載することは物理的にも不可能であり、また個々の論文の水準も(秀逸なものからそうでないものまで)様々であるので、取捨選択が行われなければならない。そこで、編集部は、投稿された個々の論文の主題と専門領域を考慮し、関係する(通常複数の)専門家に論文の評価を委ねる。評価を委ねられた専門家は、当該領域における研究の状況と水準を基準とし、投稿された論文が少なくとも専門分野において踏まえられるべき水準に達しており、なおかつ、それ以上の専門領域における研究の進展に寄与しうるだけの何らかの成果を挙げているかどうかを評価する。これらに満たない論文は掲載を拒否され、逆に満たした論文は掲載を許可される。ただし、様々な程度の書き直しを求められ、書き直しの結果によって可否を判断されることもある。これが学術雑誌における査読の大まかな仕組みである。 この査読があることによって、学術雑誌に掲載された論文は、ただ単に公刊されただけではなく、論文の著者もまたそのメンバーの1人であるところの専門家の共同体から、研究上の価値を認められたという評価を獲得する。別の言い方をすれば、学術雑誌に自らの論文が掲載されるということは、専門分野のメンバーとしての力量を認められたことを意味する。逆に世間一般で名が通っている「学者」であっても学術雑誌に掲載されない、あるいは最初から学術雑誌に投稿していないという状態であれば、他の専門家からは実際上「専門家」として認められていない、とも言える。したがって、専門家の世界ではある研究者の研究業績が査読のある学術雑誌に論文が掲載されたということは、高い意義を持っているのである。 しかし、学術誌にある論文が掲載されたからと言って、その論文の成果が真実であるとは限らない。査読とは、あくまでその成果が水準を満たしているか、その学術雑誌が規定している体裁を満たしているかを判断するだけであり、捏造や虚偽を発見する目的ではない、ということに注意が必要である。その論文の内容が真実であるかどうかはその後の同業専門家による批判・追試によって確認される。 また、紙媒体での提供を行っている学術雑誌の中には、掲載する論文の巻(Volume)中において特にインパクトの高い秀逸な記事や、学術的に大変価値のある成果を、巻頭の表紙にその記事の概要を表紙のデザインとして用いているものがある。つまり、巻頭への掲載によって、同研究分野の研究者等への一種のステータスとなり、学術的に先進的であることを知らしめることになる。
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