多変数の広義積分
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/22 03:05 UTC 版)
一変数の場合と同様に、多重リーマン積分を定義できるのは有界領域上で有界な函数だけであり、非有界領域上の積分あるいは領域の境界の近くで非有界な函数の積分に定義を拡張しようとした場合は、広義積分を考えることが必要になる。広義多重積分は領域の極限のとり方の自由度が高い(極限によって必ずしも面積が確定しない領域が存在する)ため、一変数の場合の広義積分と少々事情が異なるが、一定の仮定を満たす場合については一変数と同様の議論を行うことができる。 最も単純な場合として、非有界領域 D 上で定義された正値函数 f で、その領域に含まれる任意の有界閉部分領域(コンパクト領域)K 上で函数が有界かつ可積分であるものを考える。この場合、もともとの非有界領域 D が有界閉部分領域の列または有向族 Kλ の極限として到達可能ならば、f の D 上の積分を極限 ∫ D f ( x ) d x := lim K λ → D f ( x ) d x {\displaystyle \int _{D}f(\mathbf {x} )d\mathbf {x} :=\lim _{K_{\lambda }\to D}f(\mathbf {x} )d\mathbf {x} } によって定義し、これが有限な値をとるとき f は D 上で広義リーマン可積分あるいは単に広義積分可能であるという。ただし、これが極限の取り方に依らず一定の値を有することは証明を要する。 一般に正にも負にもなる函数 f については、それを正部分 f+ と負部分 f− に分解して、絶対変動 |f| = f+ + f− が広義積分可能(つまり、正部分と負部分がともに広義積分可能)である場合には、 ∫ D f ( x ) d x = ∫ D f + ( x ) d x − ∫ D f − ( x ) d x {\displaystyle \int _{D}f(\mathbf {x} )d\mathbf {x} =\int _{D}f^{+}(\mathbf {x} )d\mathbf {x} -\int _{D}f^{-}(\mathbf {x} )d\mathbf {x} } が広義積分可能であると定めればよい。 考えているのがルベーグ積分であるなら、今扱ったような(絶対可積分の)場合はもともとルベーグ積分の扱う範囲に含まれるので、改めて広義積分を考える必要はない。しかしそれ以外の場合については、一変数の場合と同様に、広義リーマン積分としては定義できるけれどもルベーグ積分は定義されないということが起こりうる(ただし、既に述べたように条件可積分であるような広義リーマン積分は容易に扱えない)。
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