国際資本の移動
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/19 20:16 UTC 版)
「グローバル資本主義」の記事における「国際資本の移動」の解説
「資本の自由化」も参照 1990年代末期、拡大し続ける国境を越えた資本の移動がグローバル経済を混乱・崩壊に導くという議論が世界の論壇を席巻した。反グローバリズム論者たちの共通認識は、グローバル資本主義は実体経済とかけ離れた膨大な規模の国際資本移動が展開しており、カジノ資本主義を横行させた元凶はアメリカで、主体はヘッジファンドであるというものである。 ジョージ・ソロスは1998年の著書『グローバル資本主義の危機』で、国境による求心力を失ったヒト・モノ・カネは、一国の政策では制御不可能となっており、「開かれた社会」としてのグローバル資本主義を危機的状況に追い込んでいると論じた。ソロスが問題視していたのは通貨投機であり、各国の通貨危機であった。 中野剛志はリーマン・ショックを引き起こした金融グローバリゼーションは、1980年代にアメリカが新自由主義的な理念に基づき、規制緩和や金融市場の自由化を推進したことに端を発しているとしている。厳密には1980年代に始まったグローバリゼーションは、2008年のリーマン・ショックまでの間で第1期と第2期に二分できるとしている。 岩井克人は「グローバル化と同時に進んだ金融の自由化・金融技術の発展は、金融市場全体が信用創造を行うことを可能にし始めている」と指摘している。 1997年-1998年のアジア通貨危機に際しては、ジョセフ・スティグリッツとジャグディッシュ・バグワティはともに、物品の自由化と金融の自由化は同列に論じられないと、金融グローバリゼーションを厳しく批判した。また、バグワティは自由な資本移動が大きな利益をもたらすことを示す実証的な証拠はないと断言し、資本移動の急激な自由化が進められてきたのは、アメリカの金融機関という利益集団の強力なロビー活動の影響であると主張している。さら、ゴードン・ハンソンは様々な対内直接投資の経済効果の研究を整理し、対内直接投資による正の外部効果はほとんどなかったばかりか、国内経済に悪影響を及ぼした場合すらあったという実証研究結果を2001年に発表している。 野口旭は「国際資本移動とは、本質的には国境を越えた資金貸借に過ぎず、資金の出所が国内・国外だけで善悪を区別している」と指摘している。
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