国内管轄の原則
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/27 22:39 UTC 版)
国際法の原則上、国籍の得喪に関する立法は各国の国内管轄事項であるとされている。もっとも無制限に妥当するものではなく、国籍の決定に関する条約を締結した国家は、国内立法に際して条約による制約を受けるのはもちろんである。ただし、国内法的側面において、憲法を頂点とする国内法秩序と国際法である条約との優劣をどのように位置付けるかという論点が存在する。 例えば、日本では条約は憲法には劣後し法律に優先するものと一般に考えられているので、国会が国籍に関する立法を行う際に条約による制約を受けることになるが、仮に条約の内容が憲法に抵触するものである場合には、国会は憲法に従うことを優先しなければならないので、その限りにおいて条約の内容に反する立法が行われることとなろう。一方、アメリカのように条約と法律が同順位であると考えている国では、先に締結された条約に反する内容の国内立法を行うことが許されるということになろう。 国籍の得喪に関する国内法の存在形態については、憲法典に規定を置く形態(ドミニカ共和国、ジャマイカなど)、民法典に規定を置く形態(フランス、スペインなど)、複数の法典に分散させる形態(ポルトガル、パナマなど)もあるが、多くの国では国籍の得喪に関して規定した一つの法典を制定している(日本、アメリカ合衆国、ドイツ、大韓民国など)。 国籍の得喪に関する立法は各国の国内管轄事項である以上、各国がそれぞれ独自の国籍法を制定することになる。各国の国籍法の内容が全て一致する保証はないため、重国籍や無国籍が生じる可能性は常に存在する。換言すれば、重国籍や無国籍は国籍法が各国の国内管轄事項とされていることから論理必然的に生じる現象である。
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