図書への情熱
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/05 07:19 UTC 版)
紙を食い荒らすシミは本の大敵のため、岡田はしばしば書庫から本を取り出して厳しい目つきでページをめくり、シミを見つけると憎悪で睨みつけた。樟脳、ナフタレンなどの防虫剤も他人には任せず、常に自分で新品と交換した。ハエも本の糊付けを嘗めることから、当時の殺虫剤であるインセクト・パウダーやイマヅ蠅取り粉を大量に撒き、館員たちが咳き込むほどであった。ネズミもまた皮製のものを噛むことから、夜中にわずかでも物音がすると、書庫のあちこちにねずみ捕りや猫いらずを仕掛けた。 館員たちによる毎朝の掃除の際は、箒の埃が書庫にある本にかからないよう、必ず床におからを撒かせてから掃かせた。夏にはこのおからが腐敗して臭いを放つため、食卓に卯の花が出ると不快感を催す館員がいたほどだった。冬の寒い日に館員がストーブで暖をとりながら本を読んでいると、熱で本が傷むと言って「そんな心がけで図書館員が勤まるか」と厳しく叱った。児童室を利用している子供たちが相手でも、本の上でメモをとっていると叱りつけた。図書館内でのその叱り声は別の階に響くほどで、晩年には天然のウェーブのかかった白髪頭で怒号を飛ばすことから「ホワイト・ライオン」と仇名された。 心ない閲覧者が古書類を手荒く取り扱うことを恐れるあまり、閲覧を拒否することもあった。昭和初期、アメリカ議会図書館の主任であった坂西志保が石川啄木の資料を求めて函館図書館を訪れた後、大阪で間宮不二雄に会い「間宮さん! 日本には不思議な図書館がありますね! 函館の図書館長は蔵書を一般読者に余り見せることを好まない様だ」と語っている。
※この「図書への情熱」の解説は、「岡田健蔵」の解説の一部です。
「図書への情熱」を含む「岡田健蔵」の記事については、「岡田健蔵」の概要を参照ください。
- 図書への情熱のページへのリンク