名誉又は信用の毀損の特例
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/02/09 04:01 UTC 版)
「不法行為の準拠法」の記事における「名誉又は信用の毀損の特例」の解説
不法行為について、通則法17条本文に規定する結果発生地法を準拠法とすると、名誉や信用を毀損する情報が複数の法域に伝播した場合に、いずれの地が結果発生地になるのかという問題が生じ(被害が一番大きい地の法の選択するのか、情報が伝播した全ての法域を結果発生地とするのかなど)、法的解決が複雑になる恐れがある。 そのため、通則法では、準拠法の明確化、被害者の保護、加害者の予見可能性の観点から、名誉毀損又は信用毀損の不法行為については、被害者の常居所地法を準拠法にすることにより、バランスをとった(通則法19条)。例えば、A国に居住する甲が、B国内のサーバに設置されている電子掲示板に、C国に常居所を有する乙の名誉を毀損する書き込みをした場合、C国法に基づき不法行為の成否が判断される。 名誉や信用以外の人格権を毀損した場合については、条文上は本条の送致範囲には含まれていない。この点に関する立案担当者の解説によると、いかなる権利が人格権の範疇に含まれるかが各国により様々であることから、適用範囲を明確にすることが困難である等として、特則規定は設けられなかったとされている(小出邦夫編著『一問一答 新しい国際私法』112頁)。これに対しては、パブリシティ権侵害と呼ばれるものについてはいわゆる市場の問題であり、通常の不法行為として扱う(通則法17条の問題として結果発生地法が原則になる)べきであるのに対し、プライバシー権の侵害については名誉や信用を毀損した場合と異なる連結政策を採るのは妥当ではないとして、19条の送致範囲に含まれるとの見解も示されている(澤木敬郎=道垣内正人『国際私法入門〔第6版〕』246頁)。
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