吉田保 (レコーディングエンジニア)とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > 吉田保 (レコーディングエンジニア)の意味・解説 

吉田保 (レコーディングエンジニア)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/15 03:27 UTC 版)

吉田 保
生誕 (1946-11-06) 1946年11月6日(77歳)
出身地 日本埼玉県さいたま市(旧:大宮市
職業 レコーディング & ミキシング・エンジニア
活動期間 1968年 -(56年目)
事務所 (株)サウンド・マジック・コーポレーション

吉田 保(よしだ たもつ、1946年11月6日 - )は、埼玉県さいたま市(旧:大宮市)出身の日本のレコーディング & ミキシング・エンジニア

実妹はシンガーソングライター吉田美奈子。義弟は音楽家音楽プロデューサー生田朗

来歴・人物

  • 吉野金次は東芝音楽工業時代のエンジニア仲間である。

サウンド

吉田のミックスダウンの特徴としては、まず「古典的な三点定位」が挙げられる。三点定位とは、音源を中央に配置するか、完全に右か左に振ってしまうか、というかたちで各音源を定位させる手法で、これはステレオミックスでも最も基本的なものである。現在は楽器の空間配置を考慮して細かく各音源の定位を定めることが多いが、吉田は基本的な定位を未だにこの三点定位で配置する。ドラムスを例に挙げると、バスドラムスネアドラムハイハットはいずれも中央に、タムもゆっくりしたフィルインの場合以外は中央に配置する。クラッシュシンバルライドシンバルは完全に左右に振ってしまうことが多い。

次に、吉田の音場を最も特徴付けているのがリバーブの使用法である。吉田のミックスは際立った深みを持つことで知られているが、それは各音源にかなり深いリバーブをかけていることによる。一般に、過剰なリバーブの付与は音場を濁らせ、リズムを不明瞭にする弊害があるのだが、吉田はアタックを抑制し、長いリリースの残響を付与することでこれらの弊害を減らし、深い残響を与えている。これには以前は専らプレートリバーブの代名詞的存在であった「EMT 140」を用いていたが、80年代以降は良好なプレートエコーのシミュレーションが可能なソニー製の「DRE-2000A」、「DPS-R7」の使用を経て、現在はSonnox社のプラグインである「Oxford Reverb」を愛用している。

様々なアーティストのレコーディングに参加しているが、とりわけ大滝詠一山下達郎の諸作品でのエンジニアリング・ワークが有名である。

レコーディング参加作品

市川実和子
  • 『PINUP GIRL』
大滝詠一
大野雄二
カルロス・トシキ&オメガトライブ
木内美歩
  • 「無視線」
  • 「片想いを殺したい」
  • 「第三者」
キンモクセイ
ゴスペラーズ
今野登茂子
  • 「BLACK CHRISTMAS/ゆらり」
シュガー・ベイブ
  • SONGS』※86年盤リミックス
シリア・ポール
  • 『夢で逢えたら』※87年盤リミックス
須藤薫
  • 『あなただけI LOVE YOU』
THE SQUARE
スコーピオンズ
DEEN&原田知世
  • 「夢で逢えたら (Single Mix)」
はっぴいえんど[1]
  • 「12月の雨の日(シングル・バージョン)」※未発表
  • 「はいからはくち(シングル・バージョン)」※小坂忠コーラスバージョン
浜田省吾
ピチカート・ファイヴ
平松愛理
フランク永井
  • 「WOMAN」
細川たかし
松田聖子
南佳孝
山下達郎
吉田美奈子
RAZZ MA TAZZ
  • 「夜明け/素敵な君」
渡辺満里奈 / 植木等
渡辺満里奈

吉田保 リマスタリングシリーズ

2014年から2015年にかけてリリースされた、吉田によるリマスタリング・シリーズ。1982年にCDが発売されて以降、デジタル技術の進化により、CDに記録できる音圧は次第に大きくなっていった。しかし、記録できる最大レベルは一定のため、音圧を上げるほど、楽器や声の持つ本来のピーク・レベルをつぶす必要があった。1990年代後半、マスタリング作業にデジタル・コンプレッサーが導入されると、その効果により音圧が飛躍的に上がる一方、楽器が持つ本来の音の強弱や起伏も消す結果となった。そのため派手でクリアでいわゆる「良い音」に聴こえるかもしれないが、耳に負担がかかり、長時間聴くには適さない音になった。音圧競争がエスカレートする中、アナログの限界しか意識しないで作られた当時の作品のリマスタリングには、こうした流れに一考の余地がありそうだという[4]。このシリーズは音圧を稼ぐだけのマスタリングと異なり、ピーク・レベルのコンプレッションを抑えることで、楽器の持つ本来の強弱やシンガーやプレイヤーの表現、そしてアナログ・レコードの臨場感を再現することを目的としたマスタリングが特徴。吉田が当時自身で録音した音はこうだった、あるいはこうあるべきだとの判断でリマスタリングされているため、近年マスタリングされた他のCDと比較すると音圧レベルが小さく感じられるかもしれないが、ボリュームを上げて聴き比べれば、力強くて芯がある音にもかかわらず耳にやさしい、アナログ・レコードのサウンドを想起させる音に仕上げられているという[4]

第1回13タイトル、第2回7タイトル、第3回6タイトル、第4回5タイトルのほか、杉真理1984年発表の通算6作目のアルバムが、リリース30周年記念盤として吉田による新規リマスタリングでリイシューされた。また、RAJIEのソニーミュージック音源5タイトルも、ブリッジから再発された[5]。いずれも吉田による2014年および2015年リマスタリング音源を使用し、Blu-spec CD2フォーマットが採用された。

リリース一覧

Sony Music Shop / タワーレコード限定販売(『MISTONE-30th Anniversary Deluxe Edition-』のみSony Music Shop限定)
アーティスト タイトル 品番 オリジナル発売日
杉真理 MISTONE-30th Anniversary Deluxe Edition- DQCL-3050 2014年08月22日
第一弾 (2014年10月8日発売)
吉田美奈子(RCAイヤーズ) MINAKO MHC7-30002 1975年10月25日
MINAKO II MHC7-30003 1975年12月20日
FLAPPER MHC7-30004 1976年03月25日
TWILIGHT ZONE MHC7-30005 1977年03月25日
南佳孝 SOUTH OF THE BORDER MHC7-30006 1978年07月21日
Daydream MHC7-30007 1983年07月21日
冒険王 MHC7-30008 1984年06月21日
LAST PICTURE SHOW MHC7-30009 1986年02月26日
ハイ・ファイ・セット Pasadena Park MHC7-30010 1984年02月25日
INDIGO MHC7-30011 1985年02月25日
Sweet Locomotion MHC7-30012 1986年04月10日
Gibraltar MHC7-30013 1987年04月01日
Eyebrow MHC7-30014 1988年03月21日
第二弾 (2015年2月11日発売)
吉田美奈子(アルファ・イヤーズ) 愛は思うまま LET'S DO IT MHC7-30016 1978年10月25日
MONOCHROME MHC7-30017 1980年10月21日
MONSTERS IN TOWN MHC7-30018 1981年11月21日
LIGHT'N UP MHC7-30019 1982年09月21日
IN MOTION MHC7-30020 1983年03月25日
ケン田村 Light Ace +3
※ボーナス・トラックとしてアルバム未収録3曲を追加収録
MHC7-30021 1981年02月25日
FLY BY SUNSET MHC7-30022 1982年07月01日
第三弾 (2015年4月8日発売)
EPO DOWN TOWN MHC7-30023 1980年03月21日
GOODIES MHC7-30024 1980年11月21日
JOEPO〜1981KHz MHC7-30025 1981年09月21日
う・わ・さ・に・な・り・た・い MHC7-30026 1982年05月21日
VITAMIN E・P・O MHC7-30027 1983年04月05日
HI・TOUCH-HI・TECH MHC7-30028 1984年02月21日
第四弾 (2015年8月5日発売)
CINDY Angel Touch MHC7-30032 1990年06月25日
Don't be afraid MHC7-30033 1991年08月25日
濱田金吾 Manhattan in the Rain MHC7-30034 1980年01月21日
GENTLE TRAVELIN' MHC7-30035 1981年02月21日
FEEL THE NIGHT MHC7-30036 1981年11月05日
パートナー企業専売商品(BRIDGE-inc./CS RECORDSより発売。紙ジャケット仕様、数量限定)
アーティスト タイトル 発売日 品番 オリジナル発売日
RAJIE Quatre 2014年09月27日 BRIDGE230 (DYCL-3019) 1979年
真昼の舗道 BRIDGE231 (DYCL-3020) 1980年
ACOUSTIC MOON BRIDGE232 (DYCL-3021) 1981年11月21日
HEART to HEART 2014年10月27日 BRIDGE236 (DYCL-3022) 1977年
LOVE HEART BRIDGE237 (DYCL-3023) 1978年12月21日

脚注

  1. ^ 当初ははっぴいえんどの初代ミキサーになる予定だったが、諸事情で実現しなかった。
  2. ^ 山下達郎との「新春放談」で山下の「売ってるやつは大滝さんが御自分でやったんですか?」の問いに大滝が「いや、あれは保さんだよ」と答えている。また、山下の「吉田さんはとにかく、チャンチキが死ぬほど嫌いだっつてね」に、大滝も「本当に嫌がるんだよ」と答え、さらに山下が「土着な物をものすごく嫌う」と話している。
  3. ^ 後にナハ肇とクレイジーキャッツの「実年行進曲」をミックスした河田為雄がミックスした最初のミックスがCD化されている。
  4. ^ a b 「吉田保 リマスタリングシリーズ」チラシ“吉田保 リマスタリングシリーズについて”
  5. ^ ラジ(Rajie)ソニーミュージック音源再発企画”. BRIDGE INC. CATALOG & ONLINE STORE. 株式会社ブリッジ. 2016年3月28日閲覧。[リンク切れ]

外部リンク




英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「吉田保 (レコーディングエンジニア)」の関連用語

吉田保 (レコーディングエンジニア)のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



吉田保 (レコーディングエンジニア)のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの吉田保 (レコーディングエンジニア) (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS