台頭の背景
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/28 18:45 UTC 版)
ほぼ同時期に登場しているキャラック船は当時の造船技術においてひとつの技術的到達点を示したものといえるが、万能というわけではなく、必ずしもキャラック船を用いるのが適切でない場合・目的というものも一方で存在した。当初、スペイン人やポルトガル人の探検家はキャラック船を用いて西アフリカ海岸や大西洋へと漕ぎ出していったが、キャラックのように巨大で重装備を誇る大型船は、特に航行の精度を保つという点において要する人員数においても労力の点でも負担が大きく、未知の海域での調査という目的に必ずしも向いているものではなかった。まもなく、探検家たちは100トン前後の軽キャラックや、地中海用の軽やかなラテンセイルを備えたキャラベルのような小型帆船を好むようになる。 より小型の船を用いるようになったことで、それまでは座礁の危険が高く困難だった沿岸の浅瀬や河川を探検することが可能となった。 また、キャラックのような大西洋での航行速度に重点を置いた大きな正方形の帆ではなく、キャラベルは小回りを重視した地中海用のラテン帆を備えたため、浅瀬での活動を迅速にするとともに、風を自在につかむことをも可能とし、操舵性が極めて優れていた。このように、キャラベルは当時の冒険家が求めた経済性、速度、操舵性、汎用性といった要素を満たしており、この時代の最も優れた帆船のひとつとしての地位を占めるに到った。
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