可能世界に関する理論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/02 14:43 UTC 版)
「デイヴィド・ルイス」の記事における「可能世界に関する理論」の解説
1973年ルイスは、『反事実的条件法』"Counterfactuals"を発表。可能世界論を利用しながら反事実的条件文を分析した。これは「対応者理論と量化様相論理」'Counterpart Theory and Quantified Modal Logic' (1968)、「アンセルムスと現実性」'Anselm and Actuality' (1970)、「対応者とその身体」'Counterparts of Persons and their Bodies' (1971)を発展させたものである。ルイスは様相実在論を文字通りの意味で理解するよう促していたが、あまり受け入れられなかった。この理論の骨子は、時空的にも因果的にも独立した無数の世界が存在し、それぞれの世界は我々の世界と同様に本物であるが、我々の世界とは何らかの違いがあり、さらに反事実的条件文のうちの特定のものを真とし、それ以外を偽とするものが何であるかを説明するために我々の世界内の対象について言及することが必要である、というものであった。人々はこの考えに対して「ぽかーんとした」'blank stare'とルイスは述べている。ルイスは彼の『世界の複数性について』"On the Plurality of Worlds"(1986)において、自身の考えは少しも極端ではないと様相実在論を擁護し詳しく解説した。彼自身、この考え方が常識に反しているということは認めているが、この方法を使用することの利点は不利点を補って余りあるものだと考えており、それゆえある程度の代償は払うべきだと考えるのである。 ルイスによれば、「もし私があのとき得点していたならば、私のチームは勝っていただろう」という形式の反事実的条件文を真とする事実は、我々の世界と極めて似ており、同等に現実的であるような世界が存在し、その世界において「私」の対応者が得点し、「私のチーム」の対応者が勝った、という事実である。それよりさらに我々の世界に似ており、その世界では「私」の対応者が得点したけれどもやはり「私のチーム」の対応者は負けた世界が存在するとすれば、かの反事実的条件文は偽となる。我々が反事実的可能性について語るときには、可能世界においてはどのようであるか、ということについて語っているのである。ルイスによれば、「現実性」とは、我々が生活すると考えている世界に貼り付ける、指標詞的なラベルに過ぎないのである。「必然性」とは、ある事柄が全ての可能世界において真であるときに言われることに過ぎないのである。(この文脈で可能世界を持ち出したのはルイスが初めてではない。例えばゴットフリート・ライプニッツやクラレンス・アーヴィング・ルイス(C. I. Lewis)は可能性や必然性について語るために可能世界を持ち出した。またデイヴィド・カプラン(David Kaplan)の初期の著作は対応者理論に関わるものである。ルイスの見解が独特な点は、全ての可能世界は同等に現実的であって、我々が生きる世界が他の世界より現実的であるということはない、と主張する点である。)
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