反応率と恒星進化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/16 08:02 UTC 版)
「トリプルアルファ反応」の記事における「反応率と恒星進化」の解説
トリプルアルファ反応は恒星を作る物質の温度と密度に強く依存する。この反応で生み出される単位時間当たりのエネルギー量はおよそ温度の40乗及び密度の2乗に比例する。これに対して陽子-陽子連鎖反応ではエネルギー生成率は温度の4乗及び密度の1乗に比例する。 トリプルアルファ反応がこのように強い温度依存性を持つことが、恒星進化の晩期に赤色巨星段階が存在する理由となっている。 比較的小質量の恒星では、中心核にたまったヘリウムは専ら電子の縮退圧によって重力収縮に拮抗している。よって中心核の体積はその密度のみによって決まり、圧力には依存しない。このため、小質量星の内部でトリプルアルファ反応が始まると、縮退した中心核では熱膨張が起きないために核の温度は上がる一方となり、この温度上昇によって反応速度はより一層加速され、反応が暴走することになる。この暴走的な反応をヘリウムフラッシュと呼ぶ。ヘリウムフラッシュは数分間しか続かないが、この間に中心核に含まれるヘリウムの60% - 80%が反応に使われ、莫大なエネルギーが生み出される。 これに対して質量の大きな恒星では、ヘリウム燃焼は縮退した炭素からなる中心核の周囲を取り巻く球殻状のヘリウム層の中で起こる。このヘリウム殻は縮退していないため、ヘリウム燃焼で放出されるエネルギーによって温度が上昇すると、星の外層は膨張する。この膨張によってヘリウム層の温度が下がるとヘリウム燃焼は停止し、星は再び収縮する。このような膨張と収縮を繰り返すため、この段階の恒星は脈動変光星として観測され、外層の物質を星の外部に流出させる。
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