厳罰化による問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/12 06:38 UTC 版)
「危険運転致死傷罪」の記事における「厳罰化による問題」の解説
飲酒(泥酔)運転者が、事故を起こした後に逃走(ひき逃げ)したために、時間が経過した後での逮捕時点では呼気中のアルコール濃度が事故当時からは変化していたり、または車を隠した後でさらに飲酒をしたり、事故を起こした後に大量の水を飲んで血中アルコール濃度を下げるなど隠蔽工作を図ったり、身代わりを頼む例もあり、「逃げ得」と批判される状況も生じていた。2006年には福岡海の中道大橋飲酒運転事故が発生し、ここでも悪質な隠蔽工作が見られたことから、対策と厳罰化を求める声が強まった。 こうした流れを受けて、2007年5月17日成立の「刑法の一部を改正する法律」(平成19年5月23日法律第54号)によって刑法第211条第2項が改正され、自動車運転過失致死傷罪が新設された(2007年6月12日施行)。 しかし、アルコールが抜けて飲酒運転が証明不能となってから逮捕された場合は、業務上過失致死と道路交通法違反で7年6カ月まで(刑法第211条と道路交通法第117条違反の併合罪。ただし刑法第218条・第219条の保護責任者遺棄罪や同致死罪が適用されれば最長20年になるが、これは被害者が即死の場合は適用されない)で、危険運転致死傷罪よりも最高刑が軽くなることになる。このため、ひき逃げの増加は危険運転致死傷罪による厳罰を恐れたからこそであるとの指摘もあり、これ以上の罰則の強化は逆効果であり厳罰化だけでは予防にならない、などの批判も多い。むしろ交通事故を減らすには自動車の使用を控える方が効果的であるという意見もある。 また一方で法曹界からも、自動車運転過失致死傷罪等の新設によって、交通事犯とその他の事故で刑の不均衡が生じるという批判が出た。
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