原作・黒岩涙香版と江戸川乱歩版の違い
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「白髪鬼」の記事における「原作・黒岩涙香版と江戸川乱歩版の違い」の解説
違いは多々あるが、原作・涙香版ではあくまで妻と友人がしていたのは浮気のみで、主人公の死因は不測の事態であったのに対し、乱歩版は明らかの殺意が友人にある事。このため原作・涙香版では主人公の子供が間接的に妻に死に追いやられてしまったことで哀愁と復讐心を駆り立てていく流れなのに対し、乱歩版は自分が殺されているので最初から復讐心は十分で全く別の親子関係が設定され、怪奇性が強くなっている。また、復讐方法も原作・涙香版では友人は衆人環視の拳銃による決闘で堂々と行っているのに対し、乱歩版は別荘におびき寄せてのからくり仕掛けによるじわじわした殺し方になっているなどより凄絶になっている。 また、法を無視しても復讐を肯定するか、それを犯罪者とするかは大きな違いである。 原作・涙香版の白髪鬼は「忠臣蔵」、「曾我兄弟」、「巌窟王」に勝るとも劣らない痛快な復讐譚である。男の自伝として書かれ、姦夫・姦婦を死の淵に追い詰めていく。ギドーの殺害は合法的な決闘行為で、ニーナも主人公自ら手を下すというより天罰のような最期で、復讐を遂げた主人公は善人であり、その心には一抹の寂しさが残るが逮捕されることはなく、新しい土地へ旅立つ。 下記アメリカのTV映画『天国からの復讐/悪女の構図』では、舞台を現代に変えてあるが、主人公は妻であった悪女を生きたまま埋葬。復讐を遂げた善人が逮捕されることはない。「目には目を、歯には歯を」の論理が原作と涙香版には溢れている。 乱歩版の白髪鬼は、捕らえられ終身懲役の刑を受けた主人公が、刑務所の教悔師に話すところから物語は始まる。更にテレビドラマになると、白髪鬼は名探偵・明智小五郎に主役の座を奪われ、追われる犯人になってしまう。 また、原作・涙香版は全編、メラメラと燃えたぎる復讐心で書かれている他、特に原作版では近代社会の男女の道徳の荒廃に対する批判的な文章が目立つが、こういった道徳的な希求の強い作風はマリー・コレリの特徴であるのに対し、乱歩版には復讐心は強いものの全体的に怪奇や猟奇色要素が強く、最後に牢内で反省した主人公が「あれはやりすぎた」と寂しくつぶやくような締めで終っている。
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