単純な高低アクセント言語
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/12 23:04 UTC 版)
「高低アクセント」の記事における「単純な高低アクセント言語」の解説
前述の最初の二つの基準により、日本語東京方言は典型的な高低アクセント言語とされる場合が多い。なぜなら東京方言ではどの語の発音もアクセントの置かれる1音節を示すだけで指定可能であり、どの語のアクセントもアクセントの置かれる音節直後のピッチの下降により実現されるからである。下記の例ではアクセントの置かれた音節が太字で示されている。 mákura ga「枕が」 tamágo ga「卵が」 atámá ga「頭が」 sakáná gá「魚が」(アクセントなし) 日本語ではアクセントの置かれる音節以外にも高ピッチとなる音節があるが、これは語に自動的に付与されるピッチであり、アクセントとして数えられない。なぜならそれは低い音節が後続しないからである。上の例で分かるように、日本語にはアクセントのない語もある。 インド・ヨーロッパ祖語(印欧祖語)とその子孫であるヴェーダ語のシステムは、多くの点で日本語東京方言やCupeño語と類似しており、*-ró-や*-tó-(ヴェーダ語の-rá-と-tá-)のような本来的にアクセントの置かれる形態素とアクセントの置かれない形態素によって発音を指定する。下記の例は形態素を使ってこれらの語の構成を示している。 印欧祖語*/h₂erǵ-ró-(o)s/ > *h₂r̥ǵrós「輝き」(ヴェーダ語r̥jrás) 印欧祖語*/ḱlew-tó-(o)s/ > *ḱlutós「有名だと聞いた」(ヴェーダ語 śrutás) アクセントが置かれる複数の形態素がある場合、そのアクセントは一定の形態音韻論的原理に従い決定される。以下はヴェーダ語、東京日本語、Cupeño語の、アクセント位置の比較である。 ヴェーダ語/gáv-ā́/ > gáv-ā「雌牛と」 日本語 /yóm-tára/ > yón-dara「読んだら」 Cupeño /ʔáyu-qá/ > ʔáyu-qa「欲する」 バスク語は日本語と非常によく似たシステムを持つ。バスク語のいくつかの方言では、東京日本語と同様、アクセントを持つ語と持たない語があり、他の方言では全ての主要語はアクセントを持つ。日本語と同様、バスク語のアクセントは高ピッチと次の音節への下降で構成されている。 トルコ語もしばしば高低アクセント言語とみなされる。ある条件下、例えば複合語の後半において、アクセントは消失する場合がある。 ペルシャ語は、アクセントによる高音調は強勢を伴うものの、最近の研究では高低アクセント言語とされている。そしてトルコ語と同様、一定の条件下でアクセントは中和したり消失することがある。ペルシャ語ではアクセントは高ピッチとなるとともに強勢も置かれるので、高低アクセント言語と強勢アクセント言語の中間と考えることもできる。
※この「単純な高低アクセント言語」の解説は、「高低アクセント」の解説の一部です。
「単純な高低アクセント言語」を含む「高低アクセント」の記事については、「高低アクセント」の概要を参照ください。
- 単純な高低アクセント言語のページへのリンク