単独の渦のエネルギー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/04 04:30 UTC 版)
「ベレジンスキー=コステリッツ=サウレス転移」の記事における「単独の渦のエネルギー」の解説
BKT転移のメカニズムを解明するために、渦生成に必要なヘルムホルツの自由エネルギー(つまり、エネルギーとエントロピーとの競合)について考える。 単独の渦1個(簡単のため、渦度を1とする)が持つエネルギーは、スピン波近似のハミルトニアンから、 E ∼ J 2 ∫ d 2 r ( ∇ θ ) 2 = J 2 ∫ a L d 2 r 2 π d r 1 r 2 = π J log ( L a ) {\displaystyle E\sim {\frac {J}{2}}\int {\mathrm {d} }^{2}r(\nabla \theta )^{2}={\frac {J}{2}}\int _{a}^{L}d^{2}r2\pi {\mathrm {d} }r{\frac {1}{r^{2}}}=\pi J\log \left({\frac {L}{a}}\right)} と表せる。第2式の動径方向の積分は、格子間隔(渦芯の半径)aを下限として系全体の半径Lまでの範囲で行っている。また、2次元格子上で渦の中心を置く位置のとりうる数(つまり、微視的な状態数)を考えて、ボルツマンの公式を用いると、渦のエントロピーは S = log ( L a ) 2 {\displaystyle S=\log \left({\frac {L}{a}}\right)^{2}} となる。これらを用いると、単独の渦1個を生成するのに必要な自由エネルギーは F = E − T S = ( π J − 2 T ) log ( L a ) {\displaystyle F=E-TS=(\pi J-2T)\log \left({\frac {L}{a}}\right)} となる。 F=0となる温度を転移温度として定義すると、転移温度TBKTは、近似的に T B K T = π J 2 {\displaystyle T_{BKT}={\frac {\pi J}{2}}} となる。転移温度より高温では、渦を生成するためのエネルギーFが負となるため、系全体で渦が発生した方が安定となり大量の渦が存在する相となる。一方、転移温度以下の低温相では、単独の渦生成のエネルギーが正となるため、渦の存在しない相(BKT相)となった方が安定である。ただし、後述するように、渦と逆符号の渦が対を為すような励起であれば、存在することは可能である。 上述の転移温度の見積もりは近似的なものであり、より精密な解析は繰り込み群を用いて行われる。
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