労災認定基準をゆがめた厚労省の裏通達
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/23 16:25 UTC 版)
「アスベスト関連肺がん」の記事における「労災認定基準をゆがめた厚労省の裏通達」の解説
2006年2月に厚生労働省の「石綿による健康被害に係る医学的判断に関する検討会」においてアスベスト関連疾患の判定に係る報告書がまとめられ、労災におけるアスベスト関連疾患の認定基準が改正された。それ以前は、石綿ばく露作業従事歴が10年以上あり、あわせて胸膜プラークなどの医学的所見があることが認定の要件となっていた。改正によって10年以下の従事歴であっても、肺内の石綿小体や石綿繊維量が一定以上認められれば認定される基準が設けられた。ところが、2007年3月14日、厚生労働省は「石綿による肺がん事案の事務処理について」(基労補発第0314001号 平成19年3月14日)という通達を発出した。この内容は、作業従事歴10年未満の者に適用されるべき肺内の石綿小体の基準を、10年以上の者にも照らし合わせて基準に満たない場合は各労働基準監督署で判断するのではなく、本省に照会をするように命じた。この通達は、「裏通達」と呼ばれている。この基準によって、本来であれば労災認定されている被害者が不認定となっており、アスベスト関連肺がんの救済が進んでいない大きな要因である。このような取り扱いに異議を唱えた被害者が処分の取り消しをもとめて行政訴訟を提起し、上記のような厚生労働省の運用上の不合理性を糾弾する判決が出されている。なお、東京の裁判には国の認定基準作成に関わった神山宣彦も国側の証人として裏通達の有効性を主張したが、判決ではこれらも含めた国側の意見はことごとく退けられた。中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会からも、「肺がんの認定基準が、いまだに、石綿曝露歴よりも、石綿小体数などの数値を偏重した基準になっている」と指摘されている。
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