前法と後法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/05 02:16 UTC 版)
上記と異なり、ある法律と別の法律というように、同等の効力を持つ同位の制定法の内容が矛盾する場合、時間的に後に出来た方が優先する。立法者の意思を推定・仮定すれば、前法に矛盾する後法をあえて制定するのは、前法を改める趣旨であると考えられるからである。したがって、例えば甲法が制定・公布された後、それが施行される前に乙法が制定・公布され施行された場合でも、甲法を改めるのが乙法の立法趣旨であると考えられるから、先に施行された乙法の方が後法であるとして優先することになる(→#立法的解釈)。 もっとも、いかなる法体系の下にも当然にこのように考えられるわけではない。例えば、イスラム法系においては、法源たるコーランは神が創ったものであるから、人為的な後法によってこれを改変することは許されない。社会主義国家における法体系も、マルクス主義に代表される一定の思想ないし世界観を基盤としたものであるし、イギリスのコモン・ロー法体系における古来の不文の慣習法についても同様に、人為的な後法による改変には限界があると考えられる。そのような法体系を採らない国々においても、国家の最高法規である憲法典については、憲法の基礎にある人類普遍の原理と考えられるものまでは改正によって排除することはできないと考えられることが多い。立法府をどこまで信頼することができるか、法治主義の本質の理解に関わる問題である。
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