分類小史(独立起源説と単一起源説)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/06 16:17 UTC 版)
「鰭脚類」の記事における「分類小史(独立起源説と単一起源説)」の解説
鰭脚類が、陸生の肉食動物、食肉類(ネコ目)から、海に再適応する形で進化したグループであることは、疑いようがない。また、食肉類中ではイヌ類(イヌ亜目)に近く、さらに厳密に言えばイタチ類とクマ類を内包するグループ(クマ下目)に属するのも衆目の一致するところであった。だが、鰭脚類の分類については、かつて[いつ?]さまざまな議論があった。一方では、鰭脚類に共通の、陸生の原種が存在したはずであるとする主張があり、また他方では、アシカ類とアザラシ類は起源の異なるグループであり、両者の類似は、単に収斂進化によるものである、とする主張があった。後者の説は、具体的には、セイウチを含むアシカ類はアンフィキオン科(クマ類に近縁な化石グループ)から進化したものであり、アザラシ類の方は、これとは独立にイタチ科の仲間から進化してきたものとする考え方であった。この説に従えば、鰭脚類というグループは、平行進化をしたために一見似ているだけの、本来は互いに無関係な2つの動物群を含んでおり、厳密に言えば、1つの分類群とするのは正しくないことになる。この独立起源説は、1980年代半ばまでは主流であったが、その根拠は頭骨や耳の構造などにおける両者の違いや血清学的な研究にあり、さらに、両グループの初期の化石が、アシカ類は北大西洋、アザラシ類は北太平洋と、異なった地域からしか発見されていなかったことも、この説の正しさを裏づけるように思われた。 しかしその後、第1に肢の骨格の構造の研究から、第2に近年の分子生物学的研究、すなわちミトコンドリアDNAの分析から、鰭脚類はアンフィキオン科を祖先とする単一の系統である、とする説が有力となった。この説は、漸新世後期の地層から発見された最も原始的な化石の詳しい研究によっても裏づけられた。現在では、かつての独立起源説に替わり、この単一起源説が広く受け容れられている。
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