共通部分的更新
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/28 06:13 UTC 版)
φ {\displaystyle \varphi } による更新が共通部分的であるのは、その更新が、入力文脈と φ {\displaystyle \varphi } によって指示される命題との共通部分を取ることにほかならない場合である。重要なことは、この定義は文脈によらず φ {\displaystyle \varphi } によって指示される単一の固定的な命題が存在することを仮定している、ということである。 共通部分的更新: [ [ φ ] ] {\displaystyle [\![\varphi ]\!]} は φ {\displaystyle \varphi } によって指示される命題を表すとする。このとき、 φ {\displaystyle \varphi } が 共通部分的である ⇔ 任意の C {\displaystyle C} に対して、 C [ φ ] = C ∩ [ [ φ ] ] {\displaystyle C[\varphi ]=C\cap [\![\varphi ]\!]} 共通部分的更新は、主張という言語行為を形式化する方法として、1978年にロバート・スタルネイカーによって提案された。スタルネイカーの元々のシステムにおいては、文脈(あるいは文脈集合)は、可能世界の集合として定義される。この可能世界の集合は、会話の共通認識における情報を表象するものである。例えば、もし C = { w , v , u } {\displaystyle C=\{w,v,u\}} ならば、これは、会話の参加者全員が合意する情報によれば現実世界は w {\displaystyle w} 、 v {\displaystyle v} 、 u {\displaystyle u} のいずれかであるというシナリオを表している。もし [ [ φ ] ] = { w , v } {\displaystyle [\![\varphi ]\!]=\{w,v\}} ならば、 C {\displaystyle C} を φ {\displaystyle \varphi } によって更新することは新たな文脈 C [ φ ] = { w , v } {\displaystyle C[\varphi ]=\{w,v\}} を返すことであることになる。したがって、 φ {\displaystyle \varphi } という主張は現実世界が u {\displaystyle u} である可能性を除外する試みとして理解されることになる。 形式的な観点からすれば、共通部分的更新は、お好みの静的意味論を動的意味論に引き上げるためのレシピであると見做すことができる。例えば、古典命題意味論を出発点とした場合、このレシピは次のような共通部分的更新意味論をもたらす。 古典命題論理に基づく共通部分的更新意味論: C [ P ] = { w ∈ C ∣ w ( P ) = 1 } {\displaystyle C[P]=\{w\in C\mid w(P)=1\}} C [ ¬ φ ] = C − C [ φ ] {\displaystyle C[\neg \varphi ]=C-C[\varphi ]} C [ φ ∧ ψ ] = C [ φ ] ∩ C [ ψ ] {\displaystyle C[\varphi \land \psi ]=C[\varphi ]\cap C[\psi ]} C [ φ ∨ ψ ] = C [ φ ] ∪ C [ ψ ] {\displaystyle C[\varphi \lor \psi ]=C[\varphi ]\cup C[\psi ]} 共通部分性の概念は、消去性(eliminativity)と分配性(distributivity)として知られる二つの性質に分解されうる。消去性とは、更新は文脈から世界を削除することしかできず、追加することはできないという性質である。分配性とは、 φ {\displaystyle \varphi } による C {\displaystyle C} の更新は、 C {\displaystyle C} の部分集合であるような単集合のそれぞれを φ {\displaystyle \varphi } によって更新してその結果の和集合を取ることに等しい、とする性質である。 消去性: φ {\displaystyle \varphi } が 消去的である ⇔ 任意の文脈 C {\displaystyle C} に対して、 C [ φ ] ⊆ C {\displaystyle C[\varphi ]\subseteq C} 分配性: φ {\displaystyle \varphi } が 分配的である ⇔ C [ φ ] = ⋃ { { w } [ φ ] ∣ w ∈ C } {\displaystyle C[\varphi ]=\bigcup \{\{w\}[\varphi ]\mid w\in C\}} 共通部分性は、これら二つの性質を合わせたものである。これはヨハン・ファン・ベンタムによって証明された。
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