催眠と犯罪行為の関連
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/14 09:49 UTC 版)
催眠によって犯罪行為を誘発できることを示す、決定的な証拠は存在しない。 確かに催眠で犯罪を行わせたとする実験や実例はいくつか存在する。具体的には、フォレル(Forel)が行った実験と、19世紀末のドイツで起こったチンスキー事件(Czynski Case)などがある。 フォレルは、催眠感受性の高い年配の男性に対し催眠をかけ、とある弁護士を打つよう命じてからリボルバー(実弾は入っていない)を渡した。すると男性は弁護士を撃った。さらにフォレルが「この男はまだ死んでいない。もう一発打ち込まないといけない」と言うと、男性はためらうことなくもう一度弁護士を撃った。 チンスキー事件とは、1894年、催眠術師であるチェスワフ・チンスキー(Czeslaw Czynski)が治療として男爵夫人に催眠術をかけ、男爵夫人が自身に好意を抱くようにさせたとして訴えられた事件である。男爵夫人は、はじめ胃痛と頭痛の治療のためにチンスキーの元を訪れていたが、次第にチンスキーに好意を抱き始め、最終的に婚約した。 しかしいずれの事件、実験でも「本当に催眠が犯罪を誘発したのか」という点に関する批判が存在し、し烈な議論が行われている。例えばジュール・リエジョワやベルンハイム(ナンシー学派の研究者)は、フォレルの実験のような実験が、催眠犯罪の可能性を証明したと主張しているのに対し、シャルコーは依頼された犯罪が実際の犯罪ではないとの意識が残っていると主張している。 一般に、仮に催眠が犯罪を誘発したとする事件が起こったとしても、催眠が犯罪を誘発したとは必ずしも言えない。催眠を掛けられた人は、催眠をかけられていなかったとしても犯罪行為を行ったかもしれない。また、催眠をかけた者が社会的に地位が高い人物(例:医者)であり、「この人が犯罪をさせることを言うはずがない」と思った可能性もある。 人間を対象とした実験は、倫理的に行うことが難しいため、催眠と犯罪の関係性について検証することが難しいのが現状である。
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