偽小穂の構造の理解
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/03 02:32 UTC 版)
「ストレプトカエタ属」の記事における「偽小穂の構造の理解」の解説
本属と後述のアノモクロア属以外のあらゆるイネ科植物に於いて、小穂の構造は一定のパターンを持っており、それは以下のようなものである。まず基本的な構造として、小穂は2列性の苞葉の集まりであり、ただし最下の2つの苞葉は、その内側に花を含まず、これを包頴という。それより上の苞葉はその内側に小花を含み、これを護頴という。護頴に包まれて存在するのは圧縮された花軸であり、それを構成するのは内穎と花被由来の鱗皮が2ないし3個、それに雄蕊群と雌蘂群である。包頴、護頴と内頴は元々は花序の葉鞘に由来するものと考えられてきた。つまり典型的なイネ科の小穂では包頴2枚と、護頴と内頴が小花の数だけある、ということになる。 これに対して本属の偽小穂は小花が1に対して苞葉的なものが12枚(11枚)あり、中でも6枚目がよく発達し、先端に長い芒を備えている。しかしそこに含まれる小花は一番真ん中に1つだけである。一般のイネ科では小穂の主軸が仮軸状に分枝を繰り返した形で、小花はその側面への分枝に形成されるのに対して、本属では頂端にだけ形成されていると見え、この点でも独特である。 基部側の5つの苞葉は偽小穂の軸の基部側の節から出ており、これはしばしば包頴と見なされる。これより内側の苞葉は雄蕊や雌蘂を含む節から出ている。一番内側で雄蕊と雌蘂を取り囲む3枚の苞葉に関しては、これを花弁と同等のものとする判断があり、その場合、一般のイネ科では花弁は鱗皮という形に縮小しているのとは異なるが、対応関係は取れる。第6苞葉とこの3枚との間の3枚(2枚?)は花被片のうち外側の列に相当するとも考えられる。ただしイネ科一般では小穂を構成する頴は苞葉起源の構造と考えられているので、これらを花被由来でなく、やはり苞葉起源とする見方が強い。 この構造がどのように作られたものかを理解する仮説は幾つも提出されており、おおむね大きく2つの方向性がある。1つは本来はもっと多数の小花を含む構造に由来したと見るもので、特に基部側の苞葉はそれぞれに小花を含むものであったものがすべて退化したものと見なす。もう一つはやはり小花は最先端にのみあったもので、それ以下の苞葉が短縮して生じたものとみる。更に6番目以上の苞葉の配置を理解するためにここに複数の分枝があったものが退化した、とする説も何通りかある。 いずれにしてもこの属の偽小穂は花序の省略された構造であるとは考えられるが、しかし他のイネ科と直接に比較するのが難しい。
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