側モンゴル諸語とは? わかりやすく解説

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側モンゴル諸語

(側モンゴル語 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/01/27 10:52 UTC 版)

側モンゴル諸語
セルビ=アワル諸語 (鮮卑・烏桓諸語)
契丹諸語
(提唱中)
話される地域 モンゴル中国北部中国語版バイカル湖地域
言語系統 ?セルビ=モンゴル諸語
  • 側モンゴル諸語
下位言語
Glottolog None

側モンゴル語[定訳なし]英語: Para-Mongolic)は、モンゴル諸語の消滅した姉妹群であると考えられている言語群である。側モンゴル語は、契丹語吐谷渾語などの、歴史上消滅したことが確認されている言語からなる。

属する言語

モンゴル語および側モンゴル語の年表

匈奴東湖烏桓の言語は[1]鮮卑拓跋北魏を建国)、契丹の言語と同様に、側モンゴル語である可能性がある。鮮卑語拓跋語については現存する証拠が非常に少ないため、系統関係がある可能性について推測することしかできない。契丹語の場合、豊富な証拠があるのであるが、そのほとんどは、まだ完全に解読されていない二種類の契丹文字(契丹大字と契丹小字)で書かれている。しかし、入手可能な証拠から、モンゴル語との系統関係がある可能性が高いと結論付けられている[2][3]

拓跋語

アレキサンダー・ヴォヴィン(2007)は、消滅した拓跋語(Tabɣač)をモンゴル語族として同定している[4]。Chen(2005)は、拓跋語はテュルク語族の言語であったと主張している[5]

柔然語

アレキサンダー・ヴォヴィン(2018)は、柔然柔然語は中期モンゴル語と系統的に近しいが同一ではないモンゴル語族であったと示唆している。[6]

烏桓語

シムネク(2017)は、烏桓の支配者層がモンゴル諸語の姉妹群であるセルビ・アワル語派の「側モンゴル語」を話していたと提唱している。シムネクによれば、セルビ=アワル語派とモンゴル語派は、併せてセルビ=モンゴル語族を構成している。[7]

契丹語

ユハ・ヤンフネン(2006)は、契丹語を「側モンゴル語」に分類した。これは、契丹語がモンゴル祖語の直接の子孫ではなく、姉妹群としてモンゴル語と類縁関係をもつことを意味する[8]アレキサンダー・ヴォヴィン(2017)はさらに、朝鮮語族からの契丹語への借用の可能性のあるいくつかの語彙を同定している。[9]

吐谷渾語

アレキサンダー・ヴォヴィン(2015)は消滅した吐谷渾語を側モンゴル語と同定している[10]

下位分類

シムネク(2017)は、モンゴル諸語の姉妹群として「セルビ=アワル語派」という言語群を提唱している。シムネクの分類では、セルビ=アワル語派とモンゴル語派が、あわせてセルビ=モンゴル語族を構成している[7][11]

セルビ・モンゴル語族 

モンゴル語派

 セルビ=アワル語派[注 5] 

アワル語

 古セルビ語

乞伏語[注 1]

段語[注 2]

拓跋語

吐谷渾語

 契丹諸語[注 4]

古契丹語

奚語

シルウィ語[注 3]

関連項目

脚註

  1. ^ 北部早期中古中国語*kʰɨrbuwk
  2. ^ 北部早期中古中国語 *dɔr̃
  3. ^ *širwi/*širβi < *serbi「鮮卑」
  4. ^ 宇文部
  5. ^ これは、ユハ・ヤンフネンの用語でいう側モンゴル諸語と同一である。

出典

  1. ^ Andrews 1999, p. 72.
  2. ^ Janhunen 2003b, pp. 391–394.
  3. ^ Janhunen 2003a, pp. 1–3.
  4. ^ Vovin, Alexander (2007). “Once again on the Tabɣač language”. Mongolian Studies XXIX: 191–206. 
  5. ^ Chen, Sanping (2005). “Turkic or Proto-Mongolian? A Note on the Tuoba Language”. Central Asiatic Journal 49 (2): 161–73. 
  6. ^ Vovin, Alexander (2019). “A Sketch of the Earliest Mongolic Language: the Brāhmī Bugut and Khüis Tolgoi Inscriptions” (英語). International Journal of Eurasian Linguistics 1 (1): 162–197. doi:10.1163/25898833-12340008. ISSN 2589-8825. https://www.academia.edu/39716045. 
  7. ^ a b Shimunek 2017.
  8. ^ Janhunen, Juha (2006). The Mongolic Languages. Routledge. p. 393. ISBN 978-1-135-79690-7. https://books.google.com/books?id=DuCRAgAAQBAJ&pg=PA364 
  9. ^ Vovin, Alexander (2017). “Koreanic loanwords in Khitan and their importance in the decipherment of the latter”. Acta Orientalia Academiae Scientiarum Hungaricae 70 (2): 207–215. doi:10.1556/062.2017.70.2.4. http://real.mtak.hu/56022/1/062.2017.70.2.4.pdf. 
  10. ^ Vovin, Alexander (December 2015). “Some notes on the Tuyuhun (吐谷渾) language: in the footsteps of Paul Pelliot”. Journal of Sino-Western Communications 7 (2). https://www.academia.edu/24403941. 
  11. ^ Shimunek, Andrew (2017). Languages of Ancient Southern Mongolia and North China: a Historical-Comparative Study of the Serbi or Xianbei Branch of the Serbi-Mongolic Language Family, with an Analysis of Northeastern Frontier Chinese and Old Tibetan Phonology. Wiesbaden: Harrassowitz Verlag. ISBN 978-3-447-10855-3. OCLC 993110372.

参考文献

  • Shimunek, Andrew (2017). Languages of Ancient Southern Mongolia and North China: a Historical-Comparative Study of the Serbi or Xianbei Branch of the Serbi-Mongolic Language Family, with an Analysis of Northeastern Frontier Chinese and Old Tibetan Phonology. Wiesbaden: Harrassowitz Verlag. ISBN 978-3-447-10855-3. OCLC 993110372 



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