保存部位の変遷
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/13 23:49 UTC 版)
分類学は、伝統的に形態に重点が置かれてきた。特に、保存しやすい部位、保存する形にした際に見栄えのする部位を重視する傾向があった。ちなみにこの後半の事例は、研究者のコレクション嗜好に因る面もありそうである。 原則的には、生物個体の全体を保存する方法が取られるべきであろう。しかし、標本の管理には手間も暇もかかる。また、その分野の研究が進むにつれて、重要な特徴とされる部分も決まってくる。勢い、そういった部位のみが標本として保存される事になりがちである。しかし、これはさらに研究が進んだ場合に大きな問題を残すことになる場合がある。新たにそれまでとは別の部位の重要性が発見された場合に対応できないからである。 特に20世紀後半からの分子系統学、分子遺伝学の興隆は、標本に必要な部位に大きな変化をもたらした。遺伝子の組成から系統を探索する方法の出現は、それを可能にするために細胞内の分子の情報を必要とする。つまり、形態の保存ではなく、成分の保存の必要性が大きくなったのである。そのため、従来は乾燥標本が作られた昆虫などでも液浸標本が作られる例もあるし、脊椎動物では肉片を液浸標本とする場合もある。
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