作品における差別表現問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/14 04:44 UTC 版)
「夏目漱石」の記事における「作品における差別表現問題」の解説
『坑夫』における「芋中の穢多」(芋の中で最下等のもの、の意)との表現が問題視され、角川書店はこの語を伏字にしたが、巻末の注で「特殊部落の人々への蔑称」と記述したためにかえって問題となり、1981年初めに部落解放同盟から糾弾された。このくだりは、『夏目漱石全集4』(ちくま文庫)でも「芋中のヽヽ」と伏字になっている。 その他、1994年3月には『坊つちやん』における「小使」(学校用務員)の語がNHK-FM放送の朗読の時間に問題となり、「それだから中学校の小使なんぞをしてるんだ」などの文章をそのまま読み上げたうえで、朗読終了後にアナウンサーが弁解したことがある。しかし、1994年4月からの『吾輩は猫である』では「盲(めくら)」「跛(びっこ)」などの表現が問題となり、これらの語は飛ばして朗読された。 また、漱石は1913年から1914年にかけて、播州坂越の岩崎太郎次と名乗る者から缶入りの茶を贈られ、富士登山の絵に賛をしてくれ、赤穂義士に関する俳句を書いてくれとねだられたが断ったことがある。すると岩崎は「書かないなら茶を返せ」としつこく要求を繰り返した。漱石は岩崎の言動にあきれて「何(ど)うも穢多か猶太人でもなけりや、こんな鄙嗇(けち)なことは云はなかろう」と疑い、播州近くの男に岩崎の地元を調べさせた。すると「坂越と云ふは播州でも素封家の揃つて居る所ださうだ」との回答であった。 現在は、作者が故人でありかつ文学作品であることから、これらが差別用語であることを認めたうえで、そのまま掲載されていることが多い。このような取り扱いは他の故人の作家でも同様であることが多い。なお漱石には「穢多寺(えたでら)へ嫁ぐ憐れや年の暮」の句もある。
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