代数多様体上の D-加群
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/27 01:25 UTC 版)
「D-加群」の記事における「代数多様体上の D-加群」の解説
D-加群の一般論は、複素多様体 (係数体は K = C),又は K = C のような標数 0 の代数的閉体 K 上に定義された滑らかな(smooth)代数多様体 X 上で展開された。微分作用素 DX の層は、X 上のベクトル場により生成された OX-代数であると定義され、微分(英語版)と解釈される。(左) DX-加群 M は OX-加群で DX の左作用を持っている。そのような作用は、K-線型写像 ∇ : D X → E n d K ( M ) , v ↦ ∇ v {\displaystyle \nabla :D_{X}\rightarrow End_{K}(M),v\mapsto \nabla _{v}} を与えることと同値であり、この写像は、 ∇ f v ( m ) = f ∇ v ( m ) {\displaystyle \nabla _{fv}(m)=f\nabla _{v}(m)} ∇ v ( f m ) = v ( f ) m + f ∇ v ( m ) {\displaystyle \nabla _{v}(fm)=v(f)m+f\nabla _{v}(m)} (ライプニッツ則) ∇ [ v , w ] ( m ) = [ ∇ v , ∇ w ] ( m ) {\displaystyle \nabla _{[v,w]}(m)=[\nabla _{v},\nabla _{w}](m)} を満たす。ここに f は X 上の正則函数であり、v と w はベクトル場で、m は M の局所切断であり、[−, −] は交換子を表す。従って、さらに M が局所自由 OX-加群であれば、M が与えられると、D-加群構造は平坦か、または、可積分である接続を持つ M に付随するベクトルバンドルを持つことに他ならない。 環 DX が非可換であれば、左と右の D-加群は異なっているはずである。しかし、両方の加群のタイプの間の圏同値が存在するので、入れ替えることができる。圏同値は左加群 M をテンソル積 M ⊗ ΩX へ写像することにより与えられる。ここに、ΩX は X 上の微分 1-形式の最高次の外積べきにより与えられる層である。この層は、 ω ⋅ v := − Liev (ω) により決まる自然な右作用を持つ。ここに v は階数 1 の微分作用素、いわば、ベクトル場 ω であり n-形式 (n = dim X) であり、Lie はリー微分を表す。 局所的には、X 上の座標系(英語版)(system of coordinates) x1, ..., xn (n = dim X) を選んだのち(座標系は、X の接空間の基底 ∂1, ..., ∂n を決定する)、DX の切断が、 ∑ f i 1 , … , i n ∂ 1 i 1 ⋯ ∂ n i n {\displaystyle \sum f_{i_{1},\dots ,i_{n}}\partial _{1}^{i_{1}}\cdots \partial _{n}^{i_{n}}} として一意に表現される。ここに f i 1 , … , i n {\displaystyle f_{i_{1},\dots ,i_{n}}} は X 上の正則函数である。 特に、X が n-次元アフィン空間であれば、この DX は n 変数のワイル代数である。 D-加群の多くの基本的性質は、局所的で、連接層の状況と平行している。このことは、DX は、上記の OX-基底が示すように、無限ランクで作用するOX-加群の局所自由層である。OX-加群として連接である DX-加群は、必然的に局所自由(有限ランク)となることを示すことができる。
※この「代数多様体上の D-加群」の解説は、「D-加群」の解説の一部です。
「代数多様体上の D-加群」を含む「D-加群」の記事については、「D-加群」の概要を参照ください。
- 代数多様体上の D-加群のページへのリンク