ディー‐かぐん【D加群】
D-加群
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/03/29 03:53 UTC 版)
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数学において、D-加群(D-module)は、微分作用素の環 D 上の加群である。そのような D-加群への主要な興味は、線型偏微分方程式の理論へのアプローチとしてである。1970年ころ以来、D-加群の理論は、主要には代数解析上の佐藤幹夫のアイデアがまとめられ、佐藤・ベルンシュタイン多項式についての佐藤とヨゼフ・ベルンシュタイン(Joseph Bernstein)の仕事へと発展した。
初期の主要な結果は、柏原正樹の柏原の構成定理と柏原の指数定理である。D-加群論の方法は、層の理論から導かれ、代数幾何学のアレクサンドル・グロタンディークの仕事から動機を得たテクニックが使われている。D-加群のアプローチは、微分作用素を研究する伝統的な函数解析のテクニックとは異なっている。最も強い結果は、極大過剰決定系(ホロノミック系)に対して得られ、表象により特性多様体が定義される。特性多様体は余接バンドルの包合的部分集合であり,その中で最良の例が、最小次元の余接バンドルのラグラジアン部分多様体である(フロベニウス包合)。テクニックは、グロタンディーク学派の側からゾグマン・メブク (Zoghman Mebkhout) により開発された。彼は、すべての次元でのリーマン・ヒルベルト対応の導来圏の一般的なバージョンを得た。
はじめに:ワイル代数上の加群
代数的 D-加群の第一の例は、標数 0 の体 K 上のワイル代数 An(K) 上の加群である。この例は、次のような変数の多項式からなる代数である。
- x1, ..., xn, ∂1, ..., ∂n.
ここに、すべての変数 xi と ∂j は互いに可換であり、交換子は、
- [∂i, xi] = ∂ixi − xi∂i = 1.
である。任意の多項式 f(x1, ..., xn) に対し、このことは関係式
- [∂i, f] = ∂f / ∂xi,
を意味するので、ワイル代数を微分方程式へ関連付けることができる。
(代数的) D-加群は、定義により、環 An(K) 上の左加群である。D-加群の例は、ワイル代数自身(左からの乗算により自分自身へ作用する)、及び可換な多項式環 K[x1, ..., xn] を含んでいる。ここに、xi は乗算によって作用し、∂j は xj に関して偏微分として作用する。そしてこれと似たものとして、Cn 上の正則函数の環
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- Hotta, Ryoshi; Takeuchi, Kiyoshi; Tanisaki, Toshiyuki (2008), D-modules, perverse sheaves, and representation theory, Progress in Mathematics, 236, Boston, MA: Birkhäuser Boston, ISBN 978-0-8176-4363-8, MR2357361
脚注
外部リンク
- Bernstein, Joseph, Algebraic theory of D-modules
- Gaitsgory, Dennis, Lectures on Geometric Representation Theory
- Milicic, Dragan, Lectures on the Algebraic Theory of D-Modules
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