今日のB級映画
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/12 01:23 UTC 版)
現在でも限られた期間で撮り経済的にも限られた条件で製作された映画を「B級映画」と呼ぶ場合がある。そして第1作はB級映画と言われながら高い評価を得たり、あるいは大ヒットして、続編が超大作映画となってシリーズ化するケースもある。 『007シリーズ』は第1作『ドクター・ノオ』が低予算で製作されたがヒットしたため、第2作『ロシアより愛をこめて』、第3作『ゴールドフィンガー』と進むにつれて制作費も大幅に多くなり、豪華なアクション大作シリーズへと成長、世界的に大ヒットした。 『ターミネーターシリーズ』は、第1作『ターミネーター』では制作費が600万ドルだったのに対し、第3作『ターミネーター3』で制作費は1億6千万ドルに跳ね上がっている。同時に、シリーズを追うごとに主演のアーノルド・シュワルツェネッガーの出演費も高額になっていった。 『プラトーン』は、制作費600万ドルだったが、興行ではアメリカ合衆国で制作費の20倍である、1億3,800万ドルの興行収入を記録する大ヒット映画となった。 現在でも低予算と言われる映画でも、7,000ドルで制作された『エル・マリアッチ』や、30,000ドルで制作された『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』など興行的に大ヒット作となった作品もある。 単に映画を批評する場合にもっぱらランクを指し示すものとしてB級映画が使われる場合がある。B級映画よりも質の良いものを「A級映画」、さらに質の落ちるものを「C級映画」、出来の悪さにつれてD級やZ級と進んでいく。 アサイラム社のように人気作に便乗したモックバスターを制作するスタジオの作品もB級映画と呼ばれる。 B級映画をひたすら撮り続けた「B級映画の帝王」と呼ばれるロジャー・コーマンは、映画界に多大な影響を与えており、彼の下で映画を学んだ映画関係者は数多い。しかし、コーマン本人は「B級映画の帝王」と呼ばれることを好んでいない。その理由は、自身の「B級映画」の定義は前述した二本立て映画の前座低予算映画であり、自身が作っている作品はそれとは違うエクスプロイテーション映画や前座ではない単独の低予算映画であるからだと説明している。 ジャン・リュック・ゴダールはアメリカのB級映画からその作風を学んだとも言われている。彼の最初の作品「勝手にしやがれ」はジョゼフ・H・ルイスやサミュエル・フラーを範として映画会社モノグラムに捧げるとしていた。蓮實重彦は「ハリウッド映画史講義」で「ゴダールがエドワード・G・ウルマーのPRC時代の撮影から最も多くの教訓を引き出した」としてその経済的・時間的及び空間的に限られた条件の中での撮影の単純さの中にB級映画の輝きがあり、ゴダールがその単純さの魅力を語っていると述べて、そして80年代以降のリンチやクローネンバーグ、ジョーダンやバートン、ハートリーよりもゴダールの方が遥かにB級映画に近いとして「ゴダールは一貫してB級の単純きわまりない輝きを旋回している」と述べている。ただし蓮實重彦はまた「語の厳密な意味でB級映画は永遠に失われている」としてもはや存在しないと述べていた。
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